その提案を屑屋から聞いた高木は「実はこの仏像を買ってから、国の母から何度も『早く嫁を持て』と手紙が来たのだ。これも仏像が結んでくれた縁かもしれぬ。娶るといたそう」と返事。それを屑屋から聞いた奥方が「おみよや、あなたもこれからは侍の妻、身も心もしっかりと磨くのですよ」と娘に言うと、屑屋が「磨くのはもう結構です、小判が出るといけない」と言うのがサゲ。

 頑固な千代田ではなく武家の誇りを貫く母娘を主体にしたことで、素直に美談として受け取れる噺になった。こみちの「男性を女性に替えて古典を作り直す」手法は、自身が女性演者であることを武器に変えるだけでなく、古典の創意工夫として真っ当なアプローチだ。従来の疑問点を解消して自然な流れに変えたこみち版『井戸の茶碗』、むしろこのほうが本来あるべき姿かもしれない。

●ひろせ・かずお/1960年生まれ。東京大学工学部卒。音楽誌『BURRN!』編集長。1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。『現代落語の基礎知識』『噺家のはなし』『噺は生きている』など著書多数。

※週刊ポスト2020年4月10日号

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