芸能

柳亭こみち 素直に美談噺になった母娘による『井戸の茶碗』

柳亭こみちの『井戸の茶碗』の面白さは?

 音楽誌『BURRN!』編集長の広瀬和生氏は、1970年代からの落語ファンで、ほぼ毎日ナマの高座に接している。広瀬氏の週刊ポスト連載「落語の目利き」より、男性を女性に替えて古典を作り直している柳亭こみちについてお届けする。

 * * *
 柳亭こみちが2月19日に内幸町ホールでの独演会「さいわい坐こみち堂」で披露した『井戸の茶碗』が素晴らしかった。

 浪人の千代田卜斎が屑屋に仏像を売るのが本来この噺の発端だが、こみちは千代田が10年前に流行り病で亡くなり、その奥方と娘みよが二人で長屋に暮らしているという設定に変えた。女手一つで娘を育ててきた奥方が困窮して屑屋に売った仏像は、千代田家に代々伝わるもの。そこから50両が出たと言われた奥方は、大事な仏像を手放した自分を恥じて金を受け取らない。娘みよも父の教えを引き合いに出し、「私はこの50両で裕福な暮らしをしたいとは思いません」と母に同調する。

 大家の仲裁で、仏像を買った高木作左衛門が20両、間に入った屑屋が10両受け取り、奥方は20両を受け取る代わり、自分が千代田家に嫁ぐ際に持参した茶碗を差し出す。「これは母の生家に伝わるもので、いわば私の嫁入り道具。これをお渡しするのであれば、仏像を手放した私を千代田も許してくれるでしょう」と奥方は言う。この演出は見事だ。これなら実はこれが高価な井戸の茶碗であったことも説明が付く。

 細川の殿様からの300両を二分するという高木の提案に対して奥方は「女はどなたに娶っていただくかが最も大事なこと。高木様は亡き千代田の志を継ぐかのような、真っ直ぐな若侍と見ました。娘を娶っていただけるのであれば、150両は支度金としてありがたく頂戴いたします」と言い、「いかがですか、みよ」と尋ねると、娘も「母上のおっしゃるとおりに」と賛同する。この流れも実に自然だ。ここで奥方が「娘には女一通りのことをこの私が教えました」と言うのも説得力がある。

関連キーワード

関連記事

トピックス

SNS上で拡散されている動画(Xより)
「“いじめ動画”関係者は始業式に不参加」「学校に一般の方が…」加害生徒の個人情報が拡散、YouTuberが自宅突撃も 県教委は「命にかかわる事態になりかねない」《栃木県》
NEWSポストセブン
女優・羽野晶紀と和泉元彌の母の節子さん(右・時事通信フォト)
《女優・羽野晶紀“嫁姑騒動”から24年目 の異変》元日に公開された和泉節子さんとの写真から伝わる「現在の距離感」
NEWSポストセブン
金屏風前での結婚会見(辻本達規Instagramより)
《慶事になぜ?》松井珠理奈の“金屏風会見”にあがる反感「わざわざ会見することもない」という声も 臨床心理士が指摘する「無意識の格付け」
NEWSポストセブン
命に別状はないとされている(TikTokより)
「クスリ漬けにされていたのでは」変わり果てた姿で発見された中国人インフルエンサー、薬物検査で陽性反応…肺感染症などの診断も【カンボジアの路上でホームレス状態で見つかる】
NEWSポストセブン
大谷翔平は何番を打つか
《どうなる? WBC侍ジャパンの打順》大谷翔平は「ドジャースと同じ1番打者」か、「前にランナーを留める3番打者」か…五十嵐亮太氏と福島良一氏が予想
週刊ポスト
杉本達治前福井県知事のセクハラ問題について調査報告書が公表された(時事通信フォト・調査報告書より)
〈体が熱くなるの〉〈スカートの中に手を…〉セクハラ1000通の杉本達治・元福井県知事が斉藤元彦・兵庫県知事と「上司・部下」の関係だった頃 2人の「共通点」とは
週刊ポスト
SNS上で拡散されている動画(Xより)
【栃木県・県立高校で暴行動画が拡散】学校の周りにインフルエンサーが殺到する事態に…県教育委は「命にかかわる状況」 弁護士は「典型的ないじめの構図」と指摘
NEWSポストセブン
中居の近影をキャッチ(2025年12月下旬)
《ゴルフ用ウェアで変装して百貨店に…》中居正広、外出頻度が増えている 表舞台では“盟友たち”が続々言及する理由
NEWSポストセブン
16年ぶりに写真集を出す皆藤愛子さん
16年ぶり写真集発売の皆藤愛子 「少し恥ずかしくなるくらいの素の姿や表情も、思い切って収めていただいています」
週刊ポスト
中国人インフルエンサーがカンボジアの路上で変わり果てた姿で発見された(TikTokより)
《へそ出しタトゥー美女の変わり果てた姿》中国インフルエンサー(20)がカンボジアの路上で発見、現地メディアに父親が答えた“娘と最後に連絡した日”【髪はボサボサ、うつろな表情】
NEWSポストセブン
米国によってニコラス・マドゥロ大統領が拘束された(時事通信フォト)
《大統領拘束を歓迎するベネズエラ国民の本音》「男女ともに裸にし、数日間眠らせず、窒息を繰り返させる…」国連に報告されていた“あまりに酷い拷問のリアル”
NEWSポストセブン
新宿の焼肉店で撮影された動画が物議(左は店舗のInstagramより、右は動画撮影者より提供)
《テーブルの上にふっくらとしたネズミが…》新宿・焼肉店での動画が拡散で物議、運営会社は「直後に殺処分と謝罪」「ねずみは薬剤の影響で弱って落下してきたものと推察」
NEWSポストセブン