「帝都」東京に対して、大阪は五大私鉄だけで全長1000kmもの線路を誇る「民都」だ。彼らの旧国鉄への強烈な対抗意識こそが京阪神発展のエンジンだった。その五大私鉄に関する本格的先行書『すごいぞ! 私鉄王国・関西』があるが、著者黒田一樹は2016年の刊行直後、44歳で病没した。この本に刺激を受けた田中輝美だが、「鉄分」ではとても黒田にかなわないと見切って、乗客の立場での観光案内に重心を置いた。
東日本人にとって、関西は言葉の通じる異文化である。大阪の版元140Bのこの2冊は、関西文化を知るための有力な手がかりとなるだろう。
※週刊ポスト2020年5月8・15日号