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世界で賞賛されたコロナ対策「台湾モデル」、なぜ実現できたか

台湾の蔡英文総統(写真/EPA=時事)

 台湾は中国の強硬な反対によってWHO(世界保健機関)に加盟を許されていないが、8月8日時点の新型コロナ感染者数は477人、死者7人と被害が圧倒的に少ない。台湾の新型コロナ対策は世界から称賛され、「台湾モデル」として各国で報道されている。

 1月21日に感染者第一号が確認されると台湾政府は感染者を隔離。スマートフォンの履歴で感染経路を突き止め、濃厚接触者全員に2度ずつ検査を実施し、感染拡大を抑え込んだ。また政府が主導して、品薄だったマスクの自主生産を進め、世界2位の生産能力を身につけた。

 一連のコロナ対策で脚光を浴びたのが、デジタル担当相の唐鳳(オードリー・タン)氏だ。生後8か月で言葉を話し始め、IQ(知能指数)が測定限界を超えたというタン氏は、2016年に台湾史上最年少の35歳で入閣した。『なぜ台湾は新型コロナウイルスを防げたのか』の著者でジャーナリストの野嶋剛氏が語る。

「『天才デジタル担当大臣』と称されるタン氏は、コロナ禍では民間プログラマーと共同で、6000か所以上の薬局にマスクの在庫がどれだけあるかが一目でわかるアプリを開発し、市民が効率的にマスクを買えるようにしました。行列解消のためマスクをネット予約し、コンビニで受け取れるシステムの導入もタン氏が尽力しました」

 タン氏の他にも、公衆衛生の専門家である副総統の陳健仁氏(5月に退任)や、昨年末に武漢の肺炎情報をつかみ、「感染症探偵」と呼ばれる台湾疾病管制署副署長の羅一鈞氏(当時)ら、台湾には有能な公人が多い。

「1990年代の民主化以降、台湾では多様性を重んじる傾向が強まり、タン氏のように様々なバックグラウンドを持つ大臣が現われました。また台湾は大統領制で人材を官民から登用できるうえ、今年1月の総統選の投票率が74.9%を記録するなど政治の注目度が高い。そのため失政するとすぐ選挙で政権交代が求められるため、優秀な人材を実力主義で選ぶ土壌があります」(野嶋氏)

※週刊ポスト2020年8月28日号

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