「早生まれの不利」へのあるべき対策
特に子供の非認知能力に大きな影響を与えるのが対人関係で、早生まれの子供は学校の教師や友人と良好な関係を結べないと感じていることが多く、対人関係の苦手意識は年齢を重ねるにつれて悪化していく傾向にあるという。他愛のない子供同士の遊びやスポーツは、子供の成長に決して無駄ではない。
もともと不利な立場にある早生まれの子供たちは、親が子を思うための“対策”によって、より不利になっていくということだ。
「生まれ月によって生じた差は、入試制度によって固定化されてしまうのです。遅生まれの子供は偏差値の高い高校に進み、優秀な教師や友人と出会い、レベルの高い大学に入学し、一流会社に入社するといった正のスパイラルに乗りやすく、早生まれの子供は負のスパイラルに陥りがちになります。だから、成人になっても差が続くと考えられます」(山口教授)
この「早生まれは損をする問題」は今まで放置されてきたが、ここまで差があることが判明した以上、何らかの対策ができないものか。
「制度的には、入試などの重要な場面においては、生まれ月ごとの合格枠や、影響を補正した点数や評価の導入といった方法が考えられます。今からでもできる対策としては、教職員の皆さんは早生まれの子供は不利であることを認識し、子供たちの力関係に任せず、早生まれの子供にリーダーシップを取らせたりしてみてはどうでしょう。親御さんは学業だけに目を向けず、非認知能力を高めることを意識してほしいと思います」(山口教授)
この研究結果から、早生まれの人は、「あと数か月遅く生まれて4月生まれになっていたら、別の人生が待っていたかもしれない」と夢想するかもしれないが、今の子供たちにはそんな思いをさせない教育制度が必要なのではないか。
●取材・文/清水典之(フリーライター)