芸能

ドラマ『ディア・ペイシェント』に見る日本クレーマー大国化

貫地谷しほり演じる主人公がモンスター患者と向き合う(番組公式サイトより)

「患者様は、神様ですか。」──現在放送中の『ディア・ペイシェント〜絆のカルテ〜』(NHK総合、金曜夜10時〜)のキャッチコピーだ。本作は現代日本の医療の現実に基づきながら、患者との関わりの中で成長していく女医を描いたヒューマンドラマ。ドラマオタクを自認するエッセイストの小林久乃氏は、このドラマに現代日本の縮図を見たという。

 * * *
 ドラマに限らず、クリエイティブの世界であれば“企画の切り口”の真新しさを求められる。主人公の職業を取り上げるドラマはたくさんあって刑事、医師、教師、シェフ……と当たり前だけど、バラエティは豊富だ。

 今私がハマっている『ディア・ペイシェント』は医師・真野千晶(貫地谷しほり)を中心に、物語が進んでいる。面白いのは、テーマのひとつが患者との向き合い方であること。通院は、私たちにとってとても身近な行為だ。今まで考えることもなかったけれど、医師と患者の関係性が変化しつつある。その現状をこの作品は訴えてくる。

今日も自分主義な「患者様」たち

 まずは『ディア・ペイシェント』のあらすじを。

 総合病院に勤務する内科医・真野千晶。シンプルに医療と向き合いたいと、大学病院から転職をしてきたものの、現場に問題は絶えることがない。特に総合病院として、多くの患者を扱うため、患者からのクレームは日増しにエスカレート。ついには執拗に千晶へつきまとうモンスター患者も登場してくるようになる──。

 ドラマを見るときはリアクションや独り言(テレビに向かって話しかけています)がつい多くなってしまうのだが、この作品の一話を見た時は終始無言になってしまった。

 普段は徒歩圏内の個人医院に通い、たまに総合病院へ行くペースが私たちの日常。確かにたまに出かけると、待ち時間の長さや行列に辟易することは多い。私はムダにエネルギーを消費したくはないので、暇つぶしをたくさん持って出かけるようにしている。執筆する仕事はこういうシチュエーションに強い。パソコン一台持っていけば数時間でも潰すことができるし、常に読まなければならない本もあるので、ネタが尽きることはない。

 でも普通の人はそうもいかないし、スマホをいじるだけでは限界がくる。ときには院内で「いつまで待たせるのか」とスタッフたちに喰いついている様子にも遭遇する。決して病院は手を抜いているわけではないのに。

『ディア・ペイシェント』にはそういったクレーマー、理不尽な振る舞いをする患者が続々と登場する。

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