10代の頃(1974年、19才当時)

 若づくりと若々しくあることは違うと断言するのだ。どんなふうに?

「前者は若さにしがみつきたいあまり、本来の自分を隠したり、ごまかしたりして無理をすること。対する後者は、自分は年齢を重ねているのだという現実を受け入れたうえで自分を輝かせること。前者は自分が嫌いだけど、後者は自分のことが好き。輝くことができるのは、自分のことが好きな人だけなのではないでしょうか。いずれにせよ、若々しくいるために必要なのは、ポジティブな心なのだとぼくは考えています」

 どうやらこういう深い話をもったいぶらずに披露するのが彼の流儀だ。

「何か聞かれれば、ぼくはこう思うという自分なりの意見を伝えようとするし、できるだけ正確に伝わるように言葉を選んで、順序だててと考えたりもします。でも、自分の考えを誰かに押しつけようと思ったことは一度もありません。人はみんな生きている条件が違うから。生きている条件が違えば、価値観が変わってくるのは当然なわけで。こう考えなくちゃいけないとか、こうあるべきだといった正解はないんですよ。

 ただ、自分のことは自分で考えなくてはいけないというか、自分がどうしたいのか、自分にとっての幸せって何なのかといったことは自分にしかわからない。だから仕事や恋愛を成功させたいなら、あるいは幸せになりたいのなら、まず自分自身と向き合い、自分を知ることが先決だとぼくは思うのです」

 著書の冒頭にはこんな一節がある。

《僕は大器晩成だ、と信じてやってきた。ずいぶん前から60代を人生最高の時期と考え、あれこれ準備を整えてきた。だから、僕の成功は60代から始まる》

 地位も名声もすべてを手に入れているように見えるが、まだ自分は大成していないと考えているとは驚きだ。それにしても、人生哲学ともいえる生き方術をいつの段階で習得したのか。尋ねると「うーん」としばし首を傾げてから「いつからっていうのはわからないなぁ」と言って苦笑した。

「少なくともデビューした頃は何も考えていませんでした。失敗して恥をかいたり、余計なことを言って人を傷つけたり、言葉が足りなすぎて誤解を受けたり…。さまざまな経験をする中で、人からヒントをもらったり、読書を通じて気づくこともあります。いろいろな気づきを得て、自分にとってはこう考えるのが自然だとか、物事を違う角度から眺めてみることの大切さがわかってきたんだと思います。とにかくぼくなりの考え方や暮らし方を模索しながら構築してきた気がします」

撮影/大平晋也、女性セブン写真部

※女性セブン2020年9月10日号

1979年、24才当時

1985年、30才当時

1995年、40才当時

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