例えば、3月31日に相模原の連続殺傷事件で犯人の植松聖被告が死刑判決を受けました。ぼくは、このことを日記に書くと、どうしてこんな事件が起きたのか、あらためて気になるようになって、関連するような本や資料を丹念に読みました。こんなに重大な事件も、もしかしたら日記を書いていなければ、普通のニュースのように流してしまっていたかもしれません」(末井さん)
日記がもたらすのは生きる意欲や考える気力だけではない。
「日記を書くことで、血圧低下や感染への抵抗力をはじめとした健康効果が期待されます」
こう話すのは、精神科医で『日記を書くと血圧が下がる』(CCCメディアハウス)の著書がある最上悠さんだ。
「ポイントは、日記に事実だけでなく感情も書くこと。“モヤモヤを吐き出してやろう”という気軽な心持ちで、その日、起こったこととそのときに感じた気持ちを記すことで、抑えられていた感情が解放されて精神的なストレスが和らぐ。自律神経系や内分泌系、免疫系のバランスが改善されます。これによって血圧が下がったり、頭や腰、肩の慢性的な痛みが和らぐことなどが証明されています」(最上さん)
欧米ではこうした『感情筆記』によって、ノイローゼやトラウマの改善から傷の治癒まで、さまざまな疾患で症状が緩和したり、回復が早まることが医学的に実証されている。
「頻度については個人差があり、まずは感情を書ける気分になったときに気軽な気持ちで日記を書いてほしい。いまのことだけでなく、過去に悲しい思いをしたことを書き殴ってもいいし、つらい気持ちやストレスだけでなく、楽しかったことを書いても、心身を浄化する効果があります」(最上さん)
※女性セブン2020年9月10日号