2019年までのリハビリ旅行スナップより

「ただ“楽しかった!”で終わらず、リハビリ前にさかのぼって見直します。どんな課題をどんなリハビリで克服したか。成果に対し表彰も行います。すると“では次は?”と新たな目標設定がしたくなる。リハビリ旅行をきっかけに、普段の外出が増えたり、できる家事に取り組むなど前向きになるようです」

生きがいを引き出すリハビリ旅行療法士

 利用者と信頼関係を築き、リハビリ旅行の現地の調査・評価からリハビリ計画、旅行に同行してサポートするのがリハビリ旅行療法士だ。リハビリ推進センター独自の資格で、現在全国に100人余りが輩出しているという。

「一般的な介護旅行と違うのは、高齢や要介護になるとなかなか言えない“いま何をしたいか”“どんなことにワクワクするか”をじっくり引き出し、リハビリ専門職であるリハビリ旅行療法士が伴走しながら実現していくところです。安心・安全が第一なので、看護師も同行して旅行中の体調管理を行うほか、現地の医療機関とも提携して万全の態勢を取っています」

 旅行の醍醐味である非日常を満喫できるよう地元の資源を最大限に盛り込んだり、旅館室内のレイアウトを工夫したりもするため、地元の観光組合や旅館の理解と協力が欠かせないという。

「開始当初から主旨に賛同してくださっている二大リハビリ温泉郷(静岡県稲取温泉、長野県昼神温泉)、また東日観光、JTBなどの旅行会社が連携し、リハビリ旅行を実現しています」

コンビニに行くこともリハビリの目標になる

 老親がいろいろとできないことが増えてくると、“病気だから、高齢だからしかたがない”と、意外に家族は簡単にあきらめがち。本人もまた然り。でもリハビリの専門家にかかわってもらうことで、“いまを楽しむ”ための新たな可能性が見出せそうだ。

「高齢になり、助けてもらう立場になるのは、実は本人にとっては大きな自信喪失。負い目を感じて、生活意欲までなくしてしまうことも。が、リハビリによって機能を回復したり維持したりすることで成功体験を増やし、自己効力感、つまり“自分にはこれができる”という実感が得られ、気持ちが前を向くのです」

 たとえば“自力で歩いてトイレに行けた”“腕を上げて自分で食事ができた”など、これらが当たり前にできる人にとっては些細なことが、生きる喜びや生きがいをよみがえらせることもあるという。

「目標は温泉旅行でなくてもよいのです。近くの公園に行く、コンビニで買い物をするなども、いままで困難だった人には非日常のワクワクする旅行。身近なところに目標を見つけ、生きがいを実現するようなリハビリをしましょう」

※女性セブン2020年9月10日号

生きがいがリハビリの効果を上げる

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