これから『麒麟がくる』に登場するはずの安土城(滋賀)も同様だ。信長が琵琶湖東岸に壮麗な天守を建てたが、本能寺の変のあとの動乱で焼失。石垣だけが残されているが、昨年1月、三日月大造・滋賀県知事が会見で復元構想を口にしていた。
「これまでは詳しい史料がなくて頓挫していたが、基準が緩和されるなら実現への期待が高まる」(地元財界関係者)
全国各地に動きが広がり、「令和の天守建造ラッシュ」を予感させる。千田嘉博・奈良大教授(城郭考古学)はこういう。
「高松市などは長年にわたって石垣の調査や修理を行なっており、写真も見つけ出した。設計図がないので2階、3階の柱位置が完全に確定できないが、実物に限りなく近いものができると考えられる。こうした熱心な取り組みが『復元的整備』で実現するのは歓迎すべきことだと思います。
ただ、文化庁の舵取りは難しい。ハードルを下げ過ぎると再建された天守の価値が下がるし、逆にあまりに厳しいと新基準の意味がなくなる。図面がない状態で天守を建てた後に、設計図が発見される可能性などにも留意する必要があります」
かつての姿と全く違う“砂上の楼閣”ばかりでは、何の意味もないのだ。
※週刊ポスト2020年9月18・25日号