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パソナの淡路島移転 利点より欠点が多いこれだけの理由

パソナグループ東京本社で行われた入社式でスピーチをする南部靖之代表(2017年、写真/GettyImages)

 総合人材サービス大手のパソナグループが8月31日、主な本社機能を東京から兵庫県淡路島に移転すると発表し、大きな話題を呼んだ。この大胆な発表に、翌日のTwitterでは「淡路島」がトレンド入りし、「東京一極集中の解消が進む」「コロナ禍の新しい働き方」と好意的な意見や、「かわいそう、まるで島流し」「体のいいリストラでは?」と否定的な声が相次いだ。実際のところどうなのか、パソナグループ(以下、パソナ)の狙いや今後の影響について、専門家に話を聞いた。

 パソナの東京本社には、現在社員が約4600人在籍している。このうち、人事や総務、広報、経営企画などの本社機能を担う在籍者は約1800人にのぼるが、今回の発表は、この1800人のうちの約1200人が対象となっている。段階的に実施し、2024年5月末までに完了する予定だ。

 同社によると、「通常の異動・人事配置と同様に個人の希望や社員の家庭環境を踏まえ適正に配置する」とのこと。同社南部靖之代表(68才)は移転について、「新型コロナの流行で最終決断をした。感染が拡大すれば事業への影響を避けらず、本社機能を分散してリスクヘッジをする狙いがある」との意を、複数のメディアで語っている。しかし、経済アナリストの森永卓郎さんは、「リスクヘッジは建て前」だと分析する。

「表向きは『リスクの分散』としていますが、おそらく本音は、政府へのパフォーマンスと、パソナが展開している淡路島事業のテコ入れを狙ったものと考えられます。パソナの現会長が竹中平蔵元経済財政担当大臣ということや、南部さんが兵庫9区を地盤とする西村康稔経済再生担当大臣と親交が深いこともあって、パソナは昔から政界とつながりが深いと言われています。今回の発表も、政府が今取り組んでいる東京一極集中の是正と地方活性化に対するアピールと考えるのが自然でしょう。

 また、パソナは2008年から淡路島に進出し、農業や観光事業を手掛け、近年では体験型テーマパーク『ニジゲンノモリ』(2017年)や、ハローキティをテーマにした創作レストラン『HELLO KITTY SMILE』(2018年)など、次々と事業展開してきました。しかし、これらの事業はあまりうまくいっていません。本社から人を呼び込むことで、不振事業の活性化を図る狙いもあるのではないでしょうか」

 新型コロナの影響もあり、パソナの2020年5月期の地方創生関連事業は、第4四半期に約17億円の減損損失を計上。そのうち連結子会社であるニジゲンノモリの減損損失は6億5100万円となった。人事ジャーナリストの溝上憲文氏は、今回の発表について「過去に例がない」と話す。

「大企業の大規模な本社移転としては、ファスナー大手のYKKグループが2015年に東京から富山県黒部市に本社機能を一部移転したことが最近の例にあります。創業者の吉田忠雄氏の出身地という点は今回のパソナと似ていますが、YKKの場合、移動したのは人事や法務などの管理部門の社員200人強。パソナとは規模が違いますし、1200人という数字は過去に見たことがありません。

 YKKの移転から約5年が経ちますが、『富山県は電車が少ないため、子供を学校に連れて行くのが不便』といった子育て世代の声を同社の人事を通して聞いたことがあります。パソナは女性社員が多い会社なので、同様に子育て世代が苦労する可能性はありますね」

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