優秀な人材が集まらなくなる

 ネットでは、「まるで島流し」と揶揄する声も多い。社員にはどんな影響が及ぶのだろうか。

「淡路島は自然の宝庫。海が近くて景色も美しく、そうした環境が好きな人にとっては願ってもない機会です。東京よりコロナの感染リスクも低いので、移り住みたいという社員もいるでしょう。反対に、東京のような利便性や刺激を求める人、既にマイホームを購入している人などにとってはたまったものではありません。

『体のいいリストラ』という声もあながち間違った見方ではないでしょう。コロナの影響で採用を控える企業が増え、人材派遣業の業績も落ち込んでいます。一方で日本の正社員は、労働契約法にある『解雇権濫用法理』という原則で守られているため、会社は簡単にはクビにできない。私は今回の移転で、対象者1200人のうち3分の1くらいは辞めても不思議ではないと思っています」(森永さん)

 溝上さんは今回の移転は、「リストラの手段としての計画ではないだろう」と前置きしたうえで、「結果として辞める社員が出る可能性は高い」と危惧する。

「人材育成やキャリアアップの観点から見ると、社外人脈の刺激が受けられなくなることのデメリットは大きい。東京で行われる同業他社との交流や勉強会は、情報収集や自身の成長にとって非常に大切。そうした交流が途絶えてしまえば、成長意欲が阻害されるだけでなく、淡路島でのんびり暮らすうち、東京で働く人との差が大きく開いてしまう。特に若手はキャリア志向が強いため、不安感を感じて辞めるリスクはあるでしょう。会社としても、大企業が集まる東京の方がビジネルチャンスは多くあるはずで、クライアントとの接点が物理的に遠くなるのも問題です。

 人材が集めにくいという問題もあります。優秀な大学は首都圏に集中しており、新卒採用や中途採用の際も、優秀な人材は東京に集まる。自宅から職場に通う人も多く、そういう人が淡路島を勤務先に選ぶのか、彼らにとってのメリットが見えません」(溝上さん)

 南部代表は、「経費節減」も移転の理由に挙げている。一等地の高額なオフィスの賃料を、淡路島なら場合によっては10分の1に抑えられるという。

「確かに、オフィスの家賃は劇的に抑えられるため、賃料面でのメリットは大きいと言えます。しかし、実際に移転した場合、家族がいる人は一家で移住するのか、その場合の引っ越し費用や新居費用はどうするのか。夫婦共働きの場合は、片方だけ単身赴任となる可能性も高く、その場合パソナは住宅手当を支給したり、週末の帰省交通費も負担することになるかもしれない。東京出張も当然発生するでしょうから、そうした全ての出費や社員の労力を総合的に見た時、経費削減効果に見合っているのか疑問です。そもそも夫や妻と別居するくらいなら会社を辞める、という社員もいるかもしれません」(溝上さん)

 また、パソナは、コロナ対策だけなく地震や災害などの緊急事態時に備える「BCP(事業継続計画)対策」の一環としても、本社機能の分散と淡路島への移転を進めるとしている。森永さんが話す。

「数年後には、かなりの確率で首都直下地震が来ると言われており、最悪の場合、東京は火の海になる。また、東京都の東部を流れる荒川が決壊すれば、東京23区の3分の1は水没します。そうなれば経済活動はストップし、計り知れないダメージを受けるでしょう。その意味では、リスク分散しておくことは筋が通っていると言えます」

 溝上さんは、「本社機能の分散は良いが、移転先が良いとは言えない」と指摘する。

「淡路島といえば、1995年に阪神・淡路大震災が起きた場所。ここは今後、南海トラフ地震によって大きな被害が出る可能性がある地域に入っています。BCP対策として、淡路島という場所がふさわしいのか疑問です」

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