地元住民との衝突も
淡路島側は、今回の移転を歓迎しているのだろうか。森永さんが話す。
「1200人が移住すれば住民票も移すわけで、その分税収が増えたり、お金を使う人が増えることで消費効果も見込めます。ただし、劇的な経済効果を生むほどではないため、住民もいざ移転が始まってみた時、吉と出るか凶と出るか、計りかねる部分もあるのではないでしょうか」
溝上さんは、地元住民との衝突を心配する。
「一般的に、都会から地方に移住した人は、地元住民と文化的な衝突が起きやすい。リタイア後に田舎暮らしを始めても、なじめずに都会にUターンしたという話はよく聞きます。特に今回は、ある程度まとまった人数が数回に分けて移住するとあって、町内会など町を管理する側の苦労もあるでしょう。都会で暮らす人は、隣人との関係が希薄なので、例えば挨拶をする、という当たり前のことから感覚が違うかもしれません。移転した社員は、地元住民との交流やその土地の文化に溶け込めず、気を使い続けてストレスが溜まる、ということも考えられます」(溝上さん)
さまざまな懸念が生まれるなか、移転についてパソナに聞いたところ、以下のような回答があった。
「今回の本社機能移転にリストラの意図はなく、退職を表明した社員もおりません。異動する社員の事情を踏まえ適正に進めており、社員からは前向きな声も多く寄せられております。既にパソナグループの役員(取締役、執行役員)計34名のうち、約4割が淡路を拠点に活動しており、今後も増えていく予定です」(パソナ・広報担当者)
4割の役員のなかには、南部代表も含まれるという。また、広報担当者によると、既に50人ほどの社員の移住も完了しているという。
溝上さんは、「今回の移転の実効性やパソナに『先見の明』があったかどうかは、パソナに追随する形で他の企業も地方移転に名乗りを上げ始めた時に初めて分かる」と話す。今後の動向を見守りたい。
◆取材・文/小山内麗香