国際情報

トランプが煽る陰謀論「小児性愛集団QAnonの世界支配」

藁をもつかむ思いで陰謀論に加担?(AA/時事通信フォト)

 古今東西、都市伝説や陰謀論は人の心を惑わし、魅了するものだ。しかし、それを一国の指導者が信じたり煽ったりする光景は異様である。小児性愛集団のネットワークが世界を支配しているという陰謀論にしがみつくトランプ大統領の驚くべき現状を、ニューヨーク在住ジャーナリスト・佐藤則男氏が伝える。

 * * *
 コロナウイルスが蔓延したマンハッタンを去り、コネチカット州の田舎町ウエストポートのウィークエンドハウスに疎開したのは4月であった。それからちょうど半年が過ぎた。

 8月からは、週に1回ほどマンハッタンの自宅に戻っているが、来るたびに住民たちの表情が険しくなっていると感じる。先日マンハッタンに着いて、ビルの従業員にジョークを言っても、作り笑いで相槌を打つだけだった。これは筆者がうかつで、自宅を留守にしている間に、従業員やビルのテナントに対し、「ロビーでの無駄話を慎むように」という通達が出されていたのである。マンハッタンはいまだコロナ危機の真っただ中にある。

 外に出ると、通りを歩く人々の表情も厳しく、皆、額に深いしわを刻んでいる。コロナ禍で行動が制約され、経済活動も制限されて生活は困窮している。ほとんどの人がマスクをしている点は、コネチカットの田舎町とは大きな違いだが、経済の本格的な再始動ができなければ、感染対策もそのうち疎かになるのではないかと不安がよぎる。

 少し前まで、ワクチンはすぐに完成して人々に行き渡るという楽観論もあったが、今ではその期待も大きく後退した。ワクチンがいつ市場に出て、どれだけの人に届き、そして実際に効果を発揮するのかどうか、懐疑的な人が増えている。

 人の手に負えない問題が起きると、人心は乱れる。それは戦争であったり、経済危機であったり、そして今回のように疫病だったりする。人心の乱れは社会不安を招き、犯罪や暴動、テロといった形で具現化する。しかも連鎖する。どのような形で現れるかは時代によっても異なるが、今回、アメリカでその萌芽として不気味に広がっているのが「QAnon(キューアノン)」である。ニューヨーク・タイムズが詳しく報じているが、ネットを介して広がる陰謀論や、それを支持する集団による活動を指す言葉である。

 QAnonは、2017年に匿名掲示板4chanに「Q」を名乗る人物が暗号めいた投稿(支持者らは、これを「ドロップ」と呼ぶ)を始めたことに端を発する。これまでのドロップを要約すると(支持者による勝手な解釈も多く含まれるが)、世界は悪魔崇拝的な小児性愛集団に支配されており、その集団には、ヒラリー・クリントン、バラク・オバマ、ジョージ・ソロスといった民主党重鎮とその支援者、オプラ・ウィンフリー、トム・ハンクスなどのエンタメ界のスター、さらにフランシスコ法王やダライ・ラマのような宗教指導者も含まれているというのである。

関連記事

トピックス

12月9日に亡くなった小倉智昭さん
小倉智昭さん、新たながんが見つかる度に口にしていた“初期対応”への後悔 「どうして膀胱を全部取るという選択をしなかったのか…」
女性セブン
六代目山口組の司忍組長。今年刊行された「山口組新報」では82歳の誕生日を祝う記事が掲載されていた
《山口組の「事始め式」》定番のカラオケで歌う曲は…平成最大の“ラブソング”を熱唱、昭和歌謡ばかりじゃないヤクザの「気になるセットリスト」
NEWSポストセブン
田村容疑者のSNSのカバー画像
「どうして卒業できないんだろう…」田村瑠奈被告(30)の母親が話した“大きな後悔” 娘の不登校に焦り吐露した瞬間【ススキノ首切断事件】
NEWSポストセブン
激痩せが心配されている高橋真麻(ブログより)
《元フジアナ・高橋真麻》「骨と皮だけ…」相次ぐ“激やせ報道”に所属事務所社長が回答「スーパー元気です」
NEWSポストセブン
無罪判決に涙を流した須藤早貴被告
《紀州のドン・ファン元妻に涙の無罪判決》「真摯に裁判を受けている感じがした」“米津玄師似”の男性裁判員が語った須藤早貴被告の印象 過去公判では被告を「質問攻め」
NEWSポストセブン
Instagramにはツーショットが投稿されていた
《女優・中山美穂さんが芸人の浜田雅功にアドバイス求めた理由》ドラマ『もしも願いが叶うなら』プロデューサーが見た「台本3ページ長セリフ」の緊迫
NEWSポストセブン
トンボをはじめとした生物分野への興味関心が強いそうだ(2023年9月、東京・港区。撮影/JMPA)
《倍率3倍を勝ち抜いた》悠仁さま「合格」の背景に“筑波チーム” 推薦書類を作成した校長も筑波大出身、筑附高に大学教員が続々
NEWSポストセブン
12月6日に急逝した中山美穂さん
《追悼》中山美穂さん、芸能界きっての酒豪だった 妹・中山忍と通っていた焼肉店店主は「健康に気を使われていて、野菜もまんべんなく召し上がっていた」
女性セブン
結婚披露宴での板野友美とヤクルト高橋奎二選手
板野友美&ヤクルト高橋奎二夫妻の結婚披露宴 村上宗隆選手や松本まりかなど豪華メンバーが大勢出席するも、AKB48“神7”は前田敦子のみ出席で再集結ならず
女性セブン
自宅で亡くなっているのが見つかった中山美穂さん
【入浴中の不慮の事故、沈黙守るワイルド恋人】中山美穂さん、最後の交際相手は「9歳年下」「大好きな音楽活動でわかりあえる」一緒に立つはずだったビルボード
NEWSポストセブン
NBAロサンゼルス・レイカーズの試合を観戦した大谷翔平と真美子さん(NBA Japan公式Xより)
《大谷翔平がバスケ観戦デート》「話しやすい人だ…」真美子さん兄からも好印象 “LINEグループ”を活用して深まる交流
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
「服装がオードリー・ヘプバーンのパクリだ」尹錫悦大統領の美人妻・金建希氏の存在が政権のアキレス腱に 「韓国を整形の国だと広報するのか」との批判も
NEWSポストセブン