イルカは、学生時代の友人との「みそづくり」が毎年の恒例行事に
「夫が療養生活をしていたとき、『私ずっとがまんしていたのよ。あなたのために』という気持ちが後から芽生えるのが嫌だったので、旅行などはがまんせずに夫に相談していました。実際にリフレッシュして戻ってくると、この人のためにもっと何かをしてあげたいという気持ちがますます募ったので、旅行や趣味の時間は欠かしてはいけないと気づきました。人にどう思われようと、夫と私が心地よい関係性を保つ方が大事だと思ったんです」
神部さんが亡くなってからのイルカの息抜きは、大学時代の友人とのおしゃべりだ。21才の若さで結婚し、表舞台で活躍を続けてきたイルカは友人と疎遠になっていたが、神部さんの一周忌に彼が大好きだったハワイへ訪れた際、たまたま昔なじみと再会した。それを機に、学生時代の友人たちとみそづくりをすることが毎年の恒例行事となっている。
「みんな、『きっと神部さんが会わせてくれたのよ』って言っています。みそづくりは仲のいい友達5人で、泊まりがけでやるんです。一晩中、みんなしゃべりっぱなしですよ」
さらに、夫を亡くした女性がひとりで生きるための心構えとして、「ちょっとした自信」を維持する大切さをアドバイスする。
「男の人にしかできないと思っている仕事を自分で解決できるようになると、ずいぶん不安がなくなります。たとえば、電球の交換はなるべく回数を減らすため、長持ちするLED電球にする。そうすれば、取り換え時に脚立に上って転倒する危険が減ります。キャップや瓶のふたが開けられないなら、専用の便利グッズを使えば簡単に開く。
そんな些細なことと笑われるかもしれませんが、こういう些細なことができないと自信を失ってしまうんです。工夫しておくと、力が弱くなっても大丈夫という安心につながります」
デビュー45周年に発表した『人生フルコース』という曲では、還暦後の人生を歩むポジティブな気持ちを表現している。
「人生はフルコースの料理のようなもの。メインディッシュが終わったら、最後にデザートがやってきます。還暦後はデザートのような時間。こんなにいいことはないって、忘れないでほしいですね」
※女性セブン2020年11月5・12日号
友人の畑で育てている藍の葉の刈り取り作業。天然藍で染めたグッズを制作している