ソフトバンクグループも多大な借金を抱えているが…(Nur Photo)
借金の使途が重要ということだが、その点で言えばトヨタは高く評価できるという。経済ジャーナリストの福田俊之氏が言う。
「トヨタは今年1月、静岡県裾野市にスマートシティを建設すると発表した。資本業務提携したマツダとは来年、米アラバマ州で新工場を稼働させると決めている。歴史的な低金利が続くなかで、借り入れを活用し、このように将来を見据えて積極的に投資をするのは、今の時代の経営スタイルと言えます」
また、トヨタ自動車の借り入れスタイルも盤石な経営の理由になっている。
「トヨタ自動車の有利子負債のほとんどが返済まで1年超の『長期借入金』で、これは将来の成長が見込め、有益であると金融のプロがトヨタを信用している証拠です。一方、信用力が低いと長期借り入れができなくなり、『短期借入金』が増えていく傾向があります」(同前)
過去に経営危機が表面化した東芝やシャープ、そして今年5月に経営破綻に陥ったアパレル大手のレナウンはいずれも「短期借入金」の悪循環が災いした。
「シャープは債務超過の状態が解消される2017年3月期まで、短期借入金が大半を占めていました。2016年3月期に経営危機に陥った東芝も、前年から短期借入金が倍増していた。レナウンも2018年、2019年から短期借入金が増えていたので、コロナだけが経営破綻の原因ではないでしょう」(同前)
一般家庭にたとえるなら、生活費や家賃を払うために消費者金融で金を借り、その返済のためにまた別の消費者金融で借りるといった自転車操業の状態だったと言える。
負債ランキング7位の武田薬品工業もトヨタ同様、“成長を見据えた借金”だと判断されているようだ。
「武田薬品工業は、昨年1月にアイルランドの製薬大手シャイアーを買収したことで有利子負債は従来の約1兆円から約5兆円にまで膨らみましたが、この日本企業として過去最大のM&Aで、世界の製薬大手の一角に食い込みました。その投資の結果はまだ出ていませんが、武田に注目している投資家は多い」(同前)