戦うか引き下がるか
困ったA部長は、今度は「そもそも会社内での祝賀会のあり方を考え直す時期に来てるんじゃないか」と言い出しました。それはそれとして議論の余地はあるかもしれませんが、今はそういう話をしているわけではありません。さらにA部長は「俺はBに渡された名簿を見ただけで、お前を呼んでないことは知らなかった」と漏らしたところ、D部長から「お前さっき、総合的、俯瞰的に判断したと言ったよな。見てないのにどう判断したんだ!」ともっともな突っ込みが入りました。
「会社の予算も使っている集まりなんだから、俺が排除されたのは明らかに不当だ。これは社内規定に反する」「問題はない」「会社内の秩序を乱し、宴会の自由を侵害する行為だ」「問題はない。参加者の性別や出身大学に偏りがあったので、多様性が大事だということを念頭に判断した」「お前、なに言ってんだ。大丈夫か?」「問題はない」……。
こんなやり取りが延々と続きました。部下たちはその様子を見て、A部長にすっかり呆れています。ただ、みんな最初はシンプルに「大人げないA部長が悪い」と感じていましたが、くだらない争いを見せられているうちに、だんだん「どっちもどっちかも」とD部長にも批判的な気持ちを抱き始めました。本筋から離れて「たしかに会社内での祝賀会のあり方は問題だ」と思う中途半端に意識高い系の部下もちらほら。
日本学術会議の問題は、しばらくは決着がつきそうにありません。祝賀会をめぐる言い争いは、こんなヤツを相手に怒り続けるのもバカバカしいと思ったD部長が、「もういいよ」と引き下がって終わりました。厚顔無恥に論点をずらし続けたA部長の勝ちです。
言い争いには勝ったA部長ですが、さて、本当に勝ったことになるのでしょうか。やり取りを見ていた部下たち多くが、A部長のみっともない様子を心に刻み「A部長のような人間にはなりたくない」と強く思ったのは言うまでもありません。めでたしめでたし。