国内

菅総理に学ぶ「都合が悪いときに論点をずらす3つのコツ」

首相はダンボール工場で働いていた経験もあるという

 社会のなかで生きていく以上、風向きの悪い立場に追い込まれてしまうことは誰にでもある。大人力について日々研究を重ねるコラムニストの石原壮一郎氏が考察した。

 * * *
 総理大臣は日本のリーダーです。常に国民の幸せを願い、全身全霊で日々の仕事に励んでくれているはず。そんな姿から、多くのことを貪欲に学ばせてもらいましょう。

 前総理の安倍晋三氏も、その言動を通して私たちに多くの学びを授けてくれました。とりあえず「やってる感」を出すことが大事だとか、どんなに無理筋な弁解でも言い続ければやがてうやむやにできることとか……。9月に就任した菅義偉総理大臣も、負けず劣らずというか似たり寄ったりというか、さっそく貴重な学びを授けてくれています。

 10月26日からスタートした臨時国会で野党が追及しているのが、菅総理が日本学術会議が推薦した105人の候補のうち6人を任命しなかった問題。任命しなかったこと以上に、理由をいくら聞かれても「総合的、俯瞰的な観点から」とか何とか言って、まともに説明しようとしないことが批判を呼んでいます。

 誰が判断したのかは今のところ謎ですが、総合的、俯瞰的に見て、6人が任命されなかったのは、要するに「政府に都合が悪いことを言う気に食わないヤツら」だから。しかし、そう言ってしまうとさらに大きな問題に発展するのは明らかなので、菅総理はあの手この手で理由を答えることを避け続けています。

 今、菅総理が私たちに身を持って教えてくれているのは、都合が悪いことを聞かれたときに「とことん論点をずらす」ことの大切さと具体的なやり方。さすが「後継者」だけあって、ある意味、安倍政権の伝統を踏襲しているとも言えます。昨今の日本学術会議がらみのやり取りから、論点をずらすための「3つのコツ」を見つけてみました。

【都合が悪いときに論点をずらすための3つのコツ】
その1「『そもそも論』を持ち出して対象全体を悪者にする」
その2「支離滅裂でも何でもいいので問題ないと言い張る」
その3「事実無根でも何でもいいので適当な理由を付ける」

 大きな話だと、その不自然さが見えづらくなります。身近なシチュエーションに置きかけて、菅総理がやっていることはどういうことなのかを考えてみましょう。なお設定はフィクションであり、実際の任命拒否問題とはいちおう関係ありません。

 A部長が関連会社の社長に就任するにあたって、祝賀会をやることになりました。福利厚生費から多少の補助も出ます。幹事を仰せつかったB課長は、呼ぶ人の名簿作りを部下のC係長に命じました。C係長からメールで送られてきた名簿を見て、B課長は眉をひそめます。そこにはA部長が大嫌いなライバル部署のD部長の名前が入っていました。

 幹事のB課長は、D部長の名前を削除。その上で「こういう感じでどうでしょう」と主役のA部長に見せました。B課長が勝手に忖度してD部長の名前を削除したのか、あらかじめA部長が「Dは呼ばなくていい」と指示していたのか、それはわかりません。

 盛況に終わった送別会の翌日、A部長の席にD部長がすごい剣幕で乗り込んできました。「おいA、どうして俺を呼ばなかったんだ。理由を説明しろ!」と言っています。

 本当の理由は「大嫌いだから」ですが、それを言ったら大問題に発展して、せっかくの出世がフイになりかねません。A部長は口ごもりながら「総合的、俯瞰的に判断して……」と答えたものの、火に油を注いだだけでした。なおさら激怒したD部長は「理由を言うまで俺はここを動かない」と仁王立ちしています。

関連記事

トピックス

AIの技術で遭遇リスクを可視化する「クマ遭遇AI予測マップ」
AIを活用し遭遇リスクを可視化した「クマ遭遇AI予測マップ」から見えてくるもの 遭遇確率が高いのは「山と川に挟まれた住宅周辺」、“過疎化”も重要なキーワードに
週刊ポスト
韓国のガールズグループ「AFTERSCHOOL」の元メンバーで女優のNANA(Instagramより)
《ほっそりボディに浮き出た「腹筋」に再注目》韓国アイドル・NANA、自宅に侵入した強盗犯の男を“返り討ち”に…男が病院に搬送  
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(AFLO/時事通信フォト)
「“穴持たず”を見つけたら、ためらわずに撃て」猟師の間で言われている「冬眠しない熊」との対峙方法《戦前の日本で発生した恐怖のヒグマ事件》
NEWSポストセブン
ラオスに到着された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月17日、撮影/横田紋子)
《初の外国公式訪問》愛子さま、母・雅子さまの“定番”デザインでラオスに到着 ペールブルーのセットアップに白の縁取りでメリハリのある上品な装い
NEWSポストセブン
ドジャース入団時、真美子さんのために“結んだ特別な契約”
《スイートルームで愛娘と…》なぜ真美子さんは夫人会メンバーと一緒に観戦しないの? 大谷翔平がドジャース入団時に結んでいた“特別な契約”
NEWSポストセブン
山上徹也被告の公判に妹が出廷
「お兄ちゃんが守ってやる」山上徹也被告が“信頼する妹”に送っていたメールの内容…兄妹間で共有していた“家庭への怒り”【妹は今日出廷】
NEWSポストセブン
靖国神社の春と秋の例大祭、8月15日の終戦の日にはほぼ欠かさず参拝してきた高市早苗・首相(時事通信フォト)
高市早苗・首相「靖国神社電撃参拝プラン」が浮上、“Xデー”は安倍元首相が12年前の在任中に参拝した12月26日か 外交的にも政治日程上も制約が少なくなるタイミング
週刊ポスト
三重県を訪問された天皇皇后両陛下(2025年11月8日、撮影/JMPA)
《季節感あふれるアレンジ術》雅子さまの“秋の装い”、トレンドと歴史が組み合わさったブラウンコーデがすごい理由「スカーフ1枚で見違えるスタイル」【専門家が解説】
NEWSポストセブン
俳優の仲代達矢さん
【追悼】仲代達矢さんが明かしていた“最大のライバル”の存在 「人の10倍努力」して演劇に人生を捧げた名優の肉声
週刊ポスト
10月16日午前、40代の女性歌手が何者かに襲われた。”黒づくめ”の格好をした犯人は現在も逃走を続けている
《ポスターに謎の“バツ印”》「『キャー』と悲鳴が…」「現場にドバッと血のあと」ライブハウス開店待ちの女性シンガーを “黒づくめの男”が襲撃 状況証拠が示唆する犯行の計画性
NEWSポストセブン
全国でクマによる被害が相次いでいる(右の写真はサンプルです)
「熊に喰い尽くされ、骨がむき出しに」「大声をあげても襲ってくる」ベテラン猟師をも襲うクマの“驚くべき高知能”《昭和・平成“人食い熊”事件から学ぶクマ対策》
NEWSポストセブン
オールスターゲーム前のレッドカーペットに大谷翔平とともに登場。夫・翔平の横で際立つ特注ドレス(2025年7月15日)。写真=AP/アフロ
大谷真美子さん、米国生活2年目で洗練されたファッションセンス 眉毛サロン通いも? 高級ブランドの特注ドレスからファストファッションのジャケットまで着こなし【スタイリストが分析】
週刊ポスト