『鬼滅の刃』に登場する鬼も、元々は人間だった。鬼にならざるを得なかった悲しいストーリーがファンの感動を呼んでいる。小松氏が“鬼滅ブーム”の背景を考察する。
「鬼の物語が流行した時代に共通しているのが、社会が不安定であるということです。平安時代末期から鎌倉時代、南北朝時代などはすべて“時代の裂け目”であり、王権が強大ではなく、むしろ衰退を迎えた時代でした」
幕末から明治時代にかけては“妖怪ブーム”が起こった。今年話題になった疫病を退散させる妖怪「アマビエ」もその頃に生まれているという。
「今、コロナによって人々の心の中には行き場のない不安やモヤモヤが溜まっている。それらを“退治したい”という願望が『鬼滅の刃』に託されているのでしょう。目に見えないコロナという存在が鬼に投影され、鬼が人間に退治されるストーリーによって、一種のカタルシスが得られるのではないかと思います」
鬼の歴史を知ることで、『鬼滅』の見方も変わってくるかもしれない。
※週刊ポスト2020年12月11日号