マヤカの脅威的な走りはファンの目に焼き付いている(共同)
さすがに2分の差は大きく、渡辺がマヤカの背中をとらえることはなかったものの、渡辺の歴史的な記録更新に引っ張られた早稲田大は3区の小林正幹、4区の小林雅幸が区間新を叩き出し、逆転で往路優勝を勝ち取る。この年の早稲田大と山梨学院大は逆転に次ぐ逆転で、復路もデッドヒートの末、最後には山梨学院大が2年連続の総合優勝を手にしている。
直接対決1勝1敗で迎えた1996年の箱根2区では、渡辺が2年連続で1時間6分台の区間賞を獲得した一方、マヤカは1時間9分台のタイムで区間3位に終わった。ただ、2人が最上級生として迎えたこの年の箱根で、山梨学院大は4区の中村祐二がまさかの途中棄権。早稲田大も往路はトップで芦ノ湖のゴールテープを切りながら、復路で中央大に逆転を許し、総合2位に終わった。
2区での直接対決は早稲田大の渡辺の2勝1敗、総合優勝を巡ってはマヤカの山梨学院大の2勝1敗という結果になったライバル対決。渡辺はこう振り返る。
「当時は本当に、マヤカ選手に負けたくないという意識が強かったですね。前半から速いし、中盤でも速い。一緒に走っていると、まったく休ませてもらえないという印象ですね。弾丸のような走りでした」
今回の箱根でも、日本人のエース選手とケニア人留学生たちの勝負は見どころだ。
「留学生ランナーのレベルは私たちの現役時代よりさらに進化しているように思えます。厚底シューズなどの影響もあるんでしょうが、私たちの時代とはタイムが異次元の世界になってきた。ただ、日本人の選手たちがそれに対抗する姿に期待したいですね」
そう語る渡辺は、自身とマヤカの対決を凌ぐような名勝負が生まれることを楽しみにしているようにも見えた。
(文中敬称略)