2020年9月30日夜、保釈され謝罪する伊勢谷友介(右)を多くのカメラが待ち構えていた(時事通信フォト)
「薬物には、作る人と売る人、使う人、この三種の人がいますが、重要なのはこの3者の信頼関係です。持ちつ持たれつで、金も快楽も共有している訳で、仮に誰かが逮捕されたとして、売った先や買った先を『うたって(告白して)』しまえば、その3者は全滅。組対の調べに根を上げながったということで、伊勢谷さんの信頼度は急上昇でしょう」
こう話すのは、かつて違法薬物の使用経験があり、10年ほど前に覚醒剤を販売したとして数回逮捕された経験を持つ、元暴力団員の男性(47)。当然だが伊勢谷被告と面識はないし、伊勢谷被告が彼が言うような目的で沈黙を続けた確証もない。だが、自身が逮捕された時のことを懐古しつつ、伊勢谷の「男らしさ」を褒めちぎる。
「薬物捜査では、とにかく誰から買った、誰に売ったという話ばかりしつこく聞かれます。言うと楽になる、そんなロクでもないやつ庇ってどうすると、とにかく仲間を売るよう言われます。取調べは思っている以上にきつく、同じことを延々何時間も聞かれて、大体の人なら心が折れて全部話しちゃう。伊勢谷さんは有名人だし、警察も失敗はできないから、かなり厳しい取調べがあったんだと思う。でも喋らなかった。男の中の男です」(元暴力団員の男性)
彼が絶賛するような経緯があったかどうかは不明だが、長時間の取り調べがとても辛いのは事実だ。根負けして、全てを喋らなくとも、例えば「六本木で怪しい外国人から買った」とか「新宿を歩いていていたら売っていた」など、入手先についてぼんやりとでも話してしまうだろう。実際に、薬物の使用や所持で逮捕された人々の中には、こうした言い訳でやり過ごす人も少なくない。でも、伊勢谷はこうした「ごまかし」すらした形跡がないのだ。
もちろん、繰り返すが沈黙を守り続けた本当の理由はわからない。だが、罪を認めているなら黙り続けたことに対して、一般人とは違う「だから偉い」という感覚を、ある方面の人たちに抱かせ、信用できると思わせたことは、果たして良かったのだろうか。結果として、罪を悔いて更生しようという伊勢谷に、これまで以上に悪い意味での誘惑が多くなるのではないかと危ぶむ声もある。
「絶対に喋らない硬い客、有名人だし金もある、となれば、売人としては黙っちゃいられませんよ。有名人も口の堅い売人から買いたがりますから、どうにか伊勢谷さんと懇意になって、質の良い薬物を、末長く、少し割高で買ってもらいたい、そう目論んでいる売人はいっぱいいるでしょう」(元暴力団員の男性)
伊勢谷は心から反省をし、快楽に負けて人に迷惑をかけるようなことを二度としないと誓っているかもしれない。しかし、そんな意思とは関係なく、実に無責任な「期待」が寄せられているはずだというのだ。
実際、有名人の犯罪は一般人にはない更生の難しさが存在する。だが、立ち直る機会は平等にあるべきだろう。だが、判決後のコメント「今一度許されることがあるならば、社会活動にいそしむ所存です。私が信念として持ち続けている『挫折禁止』の言葉の通り、自分の人生を諦めずに生きていきたいと考えております」には、危うさが隠れているように思えて仕方がない。あまりに強い意志ばかり示しているからだ。
「挫折禁止」という強さが、次の挫折のきっかけにならないことを祈るばかりだ。