国際情報

「私はトランパー」と勇気ある告白をした東欧移民女性の本音

トランプ氏を支持するアメリカ人にも目を向けなければならない(AFP=時事)

トランプ氏を支持するアメリカ人にも目を向けなければならない(AFP=時事)

 アメリカの政権交代は、心配された暴動などもなく静かに行われた。バイデン新大統領は、就任初日から「脱トランプ政策」を急ピッチで進めているが、それを悲しい目で、口惜しい気持ちで見ている国民も少なくない。必ずしも過激派ばかりではない。ニューヨーク在住ジャーナリスト・佐藤則男氏が、日本人が見落としているアメリカ人の本音をリポートする。

 * * *
 コネチカット州にあるウィークエンドハウスで、掃除や洗濯などの仕事を頼んでいるアンナという女性がいる。東欧からの移民で、年のころは50歳くらい。かれこれ15年ほど、今の仕事をお願いしている。

 とても朗らかな女性で、床に丁寧にモップをかけてくれる。よくはしゃぎ、甲高い声を出しながら家の中のことをやってくれるが、最近はおとなしいのが気になっていた。筆者がリビングのテレビで大統領選挙や政権交代のニュースを見ていると、元気なく片手でモップを押している。たまに手を止めて、じっとテレビを見ていることに気が付いた。横目で彼女の様子をうかがうと、またテレビをチラチラ覗く。画面にはトランプ前大統領が映っていた。

 思い切って聞いた。「あなたはトランパー(トランプ支持者)なの?」。図星であった。別に隠すことではない。なぜ筆者にも言わなかったのか、単刀直入に質問した。

「私は社会主義の国から亡命してきました。生まれた国を捨ててアメリカに逃げてきたのです。苦労してやっと滞在が許可されて、こうしてアメリカで暮らしています。アメリカは、自分たちで働き、食べていければ、あとは自由が勝ち取れます。すばらしい国です」

 アンナはそう言う。彼女には息子がいるが、すでに働いている。そして、来年は大学に進学するのだという。筆者はまず、「なにも隠れてトランプ氏の出ているテレビを見なくてもいい。見たければ堂々と見ていいですよ」と伝えた。アンナはやっと笑顔に戻り、熱心に見入っている。よほどトランプ氏がお気に入りの様子だ。「なぜトランプ氏をそんなに支持するのか」と聞いてみると、こんな答えが返ってきた。

「リベラル勢力に政権を取らせると、真面目に働いて、お金を節約し、家族の将来のために貯金している私たちから高い税金を巻き上げ、働かない人たちに配ってしまいます。そんなことを許してはいけないのです。

 私の生まれた国はロシアに支配され、私たちが貯めたお金を取り上げました。私たちは抗議デモをしました。そして、警察につかまりました。私は知り合いに騙されてデモに参加したことを打ち明け、なんとか釈放されました。それからアメリカにいた親戚を頼り、移民したのです。私の家族は皆、トランプ支持です」

関連記事

トピックス

公金還流疑惑がさらに発覚(藤田文武・日本維新の会共同代表/時事通信フォト)
《新たな公金還流疑惑》「維新の会」大阪市議のデザイン会社に藤田文武・共同代表ら議員が総額984万円発注 藤田氏側は「適法だが今後は発注しない」と回答
週刊ポスト
“反日暴言ネット投稿”で注目を集める中国駐大阪総領事
「汚い首は斬ってやる」発言の中国総領事のSNS暴言癖 かつては民主化運動にも参加したリベラル派が40代でタカ派の戦狼外交官に転向 “柔軟な外交官”の評判も
週刊ポスト
立花孝志容疑者(左)と斎藤元彦・兵庫県知事(写真/共同通信社)
【N党党首・立花孝志容疑者が逮捕】斎藤元彦・兵庫県知事“2馬力選挙”の責任の行方は? PR会社は嫌疑不十分で不起訴 「県議会が追及に動くのは難しい」の見方も
週刊ポスト
黒島結菜(事務所HPより)
《いまだ続く朝ドラの影響》黒島結菜、3年ぶりドラマ復帰 苦境に立たされる今、求められる『ちむどんどん』のイメージ払拭と演技の課題 
NEWSポストセブン
公職上の不正行為および別の刑務所へ非合法の薬物を持ち込んだ罪で有罪評決を受けたイザベル・デール被告(23)(Facebookより)
「私だけを欲しがってるの知ってる」「ammaazzzeeeingggggg」英・囚人2名と“コッソリ関係”した美人刑務官(23)が有罪、監獄で繰り広げられた“愛憎劇”【全英がザワついた事件に決着】
NEWSポストセブン
NHK大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』の打ち上げに参加したベッキー
《ザックリ背面ジッパーつきドレス着用》ベッキー、大河ドラマの打ち上げに際立つ服装で参加して関係者と話し込む「充実した日々」
NEWSポストセブン
三田寛子(時事通信フォト)
「あの嫁は何なんだ」「坊っちゃんが可哀想」三田寛子が過ごした苦労続きの新婚時代…新妻・能條愛未を“全力サポート”する理由
NEWSポストセブン
大相撲九州場所
九州場所「17年連続15日皆勤」の溜席の博多美人はなぜ通い続けられるのか 身支度は大変だが「江戸時代にタイムトリップしているような気持ちになれる」と語る
NEWSポストセブン
一般女性との不倫が報じられた中村芝翫
《芝翫と愛人の半同棲にモヤモヤ》中村橋之助、婚約発表のウラで周囲に相談していた「父の不倫状況」…関係者が明かした「現在」とは
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《噂のパートナーNiki》この1年で変化していた山本由伸との“関係性”「今年は球場で彼女の姿を見なかった」プライバシー警戒を強めるきっかけになった出来事
NEWSポストセブン
デコピンを抱えて試合を観戦する真美子さん(時事通信フォト)
《真美子さんが“晴れ舞台”に選んだハイブラワンピ》大谷翔平、MVP受賞を見届けた“TPOわきまえファッション”【デコピンコーデが話題】
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
「週刊ポスト」本日発売! 高市首相「12.26靖国電撃参拝」極秘プランほか
NEWSポストセブン