日本を代表するSF作家・小松左京氏が生誕90年を迎えた。小松氏の小説やエッセイは、令和の時代に読んでも古びることなく、新しい視点を与えてくれる。『日本沈没』や『復活の日』など、コロナ禍の現代に通ずる作品も多い。書評家の大森望氏が、選りすぐりの6冊を紹介する。
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『果しなき流れの果に』(ハルキ文庫、858円)
白亜紀の地層から出土した砂時計。その砂は、いつまでも永遠に落ちつづけている……。このありえない砂時計の謎を解明すべく、発掘現場に向かった野々村は、10億年のスケールでくり広げられる、時空を超えた戦いに巻き込まれる。小松左京らしい蘊蓄とハッタリ、迸るようなエネルギーに満ちた壮大な本格SFです。
『ゴルディアスの結び目』(角川文庫、836円)
自身の南極旅行に触発されて書いたという中編4編から成るSF連作集(ただし、相互に関連はありません)。表題作は、人間の心の中に潜るというモチーフをSFの枠組みで描いた、いわゆる「サイコダイバーもの」の先駆的な傑作。映画『ザ・セル』(2000年)や『インセプション』(2010年)の元ネタ……のようにも見えますね。