『明烏 落語小説傑作集』(集英社文庫、524円)
小松左京は三代目・桂米朝と親交が深く、ラジオの人気トーク番組を長年一緒に担当。本書収録の「天神山縁糸苧環」と「乗合船夢幻通路」には、この黄金コンビが、落語家の桂文都とSF作家の“私”こと大杉として登場します。とくに前者は、上方落語の「天神山」と「立ち切れ」を合わせた現代的な人情噺で、小松短編屈指の傑作です。
『霧が晴れた時 自選恐怖小説集』(角川ホラー文庫、792円)
太平洋戦争末期を背景に、未来を予言するという妖怪くだんを描く「くだんのはは」をはじめ、ホラー小説の名手としても知られる著者の名作15編を収録する粒ぞろいの短編集。「骨」を初めて読んだときの衝撃はいまも忘れられません。他に、戦争SFの名作「影が重なる時」「召集令状」や、「保護鳥」「蟻の園」など。
『SF魂』(新潮新書、814円)
グラマンの機銃掃射で死にかけた少年時代の戦争体験から、高橋和巳らとの同人誌活動、放送作家の日々、SFマガジンとの出会い、大阪万博と『日本沈没』、映画づくり、阪神・淡路大震災……。「ミスターSF」の波瀾に満ちた人生とジャンル横断的な活躍をコンパクトな一冊に凝縮。広大すぎる小松ワールド探検の出発点に最適です。