あああああああ(撮影/嶋邦夫 協力/東京新聞)

宮城県仙台市の海岸(荒浜)で祈りを捧げる望月さん。「カメラマンとして、これまででいちばん反響があった写真です」(嶋さん。撮影/嶋邦夫 協力/東京新聞)

 時間が流れ、震災に対する世間の人々の関心が薄れてきてからも、望月さんは被災者に寄り添った。5年ほど前には、宮城県石巻市の大川小学校を訪れている。津波で児童74人と教職員10人が犠牲になった悲劇の場所である。被災地へ同行した望月さんの高校時代からの友人、高田顕治さんが振り返る。

「あのとき、望月は津波で84人が犠牲になった大川小学校のほかにも、いくつかの場所で読経しました。彼は、震災の死者を送るという使命感をもって、被災地を訪れていました」

 東京と被災地を頻繁に行き来していた望月さんが最後に銀座に立ったのは、昨年の12月26日。高田さんは、その3日後に望月さんと会っている。

「一緒にそばを食べました。そのとき、ちょっと咳はしていましたが、熱もなく嗅覚や味覚に異状もなかった。ところが、大晦日に40℃を超える熱が出て、元日の夕方に救急車で運ばれた。『やばいよ、けんちゃん』と連絡が来たのが最後で、LINEを返信しても、その後、既読になることはありませんでした」

 東北から遠く離れた銀座で、10年間、欠かすことなく被災地への祈りを捧げ続けたのが望月さんだった。足を止めた人から、「東北のために祈ってください」と頼まれ、手を合わせることもあった。

 すでに撤去されているが、望月さんが立ち続けた銀座の和光前には、望月さんがこの世を去ったことを知らせる紙が特別に張られ、花束を手向ける人が続いた。張り紙には、《この場所に立ち続けた とても優しく美しい人》という一文が書かれていた。

 新型コロナ感染が発覚したその後の望月さんの様子について、高田さんが語る。

「彼の入院後、お姉さんから連絡があったんです。気管を切開して酸素を入れるがダメで、肺に菌が入っているから薬を投与すると。しかし、薬も効かず、もう手の施しようがないと医師から告げられたそうです。

 1月18日の15時頃に息を引き取ったと連絡がありました。ご時世柄、遺体はすぐに火葬され、遺骨は役所から宅配便で届いたそうです。あとから、火葬費用の請求書も届いたとかで、仕方ないのはわかりますが、対応があまりに無神経。本当につらい最期です」

「もう10年」か、「まだ10年」か──歴史的災害を目の当たりにした私たちは、命の尊さと向き合ってこられただろうか。

※女性セブン2021年3月25日号

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