颯爽と道を渡る
フェンシング業界の看板として、走り回る太田。この日も会食相手は、スーツ姿の男性たちだった。
「日本のオリンピック競技団体の中で最年少でトップになった太田さんは、経営的センスも持ち合わせている方です。マイナースポーツだったフェンシングを“稼げるコンテンツ”と断言し、メダル至上主義からの脱却のため、ビジネス面での成長を目指している。そのために、スポンサー企業との打ち合わせは重要な仕事と言えます」(前出・広告代理店関係者)
緊急事態宣言下では、不要不急の外出自粛、20時以降は特に徹底するように政府は要請している。そのことを太田も理解しているようで、この日の行動について問い合わせると、自身のマネジメント事務所を通じてこう回答した。
「緊急事態宣言下に軽率な行動を取ってしまい、申し訳ございませんでした。この日はスポンサー企業様と食事をしながら打ち合わせをしておりました。政府からの要請にしたがって、20時までに食事を終える予定でありましたが、打ち合わせが終わらずに、次のお店に移動して、話を続けておりました。医療関係者や皆様が大変な中、大変申し訳ございませんでした」
日本フェンシング協会は昨年6月、財務状況を発表。太田はそれに合わせてツイッターで「補助金依存からの脱却を目指して今日までやってきましたが、まだまだ道半ば、財政面は厳しい状態です」「そんな中、ご支援して頂いているスポンサー各社様に感謝しております。選手、親御さんにも負担かけて申し訳ないです」と綴っていた。
海外遠征費用などは補助金などで賄われるが、全体の約4割が選手個人の“自腹”になっているという。「自分が会長の間に、日本代表選手の遠征費を捻出できる仕組みだけは作りたい」と語っていた太田。そうした状況だからこそスポンサーとの打ち合わせはとって重要なのだろう。少なくとも、政治家たちの“クラブ通い”よりは意味がある会合だったと言えそうだ。