温泉ワーケーションの「シリコンバレー」化に期待
和多屋別荘で提供されているエグゼクティブ向け温泉ワーケーションは、あくまでワーケーションという働き方の一例でしかない。それぞれの温泉地、温泉旅館で、条件や環境に応じた多様なワーケーション事業が考えられるが、本事業の全国展開を目指すイノベーションパートナーズの本田氏は「温泉ワーケーションには、これからの温泉旅館の経営的な礎となりうる、大きな可能性が秘められています」と期待する。
「個人的に希望している将来図としては、さまざまな経営者が集まり、彼らにアピールしたいさまざまな人材が集まり、そこから新しい事業が生まれるような場になること。イメージ的には、アメリカのシリコンバレーです。そこに行けば、まだ世に出ていない新しいサービスや野心的な技術、斬新な発想ができる人材に巡り会うことができて、それらを青田買いできる。そんな場所に育ってくれたら嬉しいですね」(本田氏)
ワーケーションという新しい働き方、余暇の過ごし方が、今後どのような形で日本人に広まっていくのかは、未知数だ。しかし、小原氏は「どのような内容、どのような値付けで展開するかはケースバイケースだが、旅館であればひとまず、ワーケーション事業に取り組んでみることを勧めたい」と語る。
全国の旅館がワーケーション事業に取り組めば、そこで利用者の取捨選択が生じ、いくつかの成功パターンを類型化することができる──というのが、その意図だ。合わせて、バッドマーケットで活路を見出し、少しでも生き残る可能性を上げるには、これまでやってこなかったことに挑戦する姿勢、従来の価値観を捨てて変化していく姿勢が必須になる、という強い信念もある。
さまざまな価値観が一気に覆された2020年。ポストコロナの世界を生き抜くためのヒントのひとつが、「変化を恐れない」という姿勢にあることは間違いないだろう。小原氏と本田氏の挑戦は始まったばかりだ。
(取材・文/漆原直行)