課題は「どうやってリピートしてもらうか」
そんな小原氏が現在認識している課題は、どうすればリピートしてもらえるか、という点だ。
「最初は、温泉旅館という空間で過ごす高揚感であるとか、露天風呂、懐石料理、居心地のよい客室などがもたらすラグジュアリー感で満足していただけるでしょう。さらに働く場として、余暇を過ごす場としての環境を高水準で提供し続けることができれば、もう何回かは足を運んでいただけるかもしれません。
ただ、そうした感覚がお客様のなかで当たり前のものになったとき、どうすれば『また嬉野温泉、和多屋別荘までワーケーションに出かけてみよう』と思っていただけるのか。
いろいろ思い悩んだのですが、ひとつ糸口になると考えているのは『ワーケーションが利用者の日常になる』こと。嬉野温泉で過ごす時間が、日々の暮らしのなかに溶け込んでいる状態です。
もう少し具体的にするなら『あのレストランのマスター、あの居酒屋のおかみさんに会いにいこう』『あのスナックで話した地元の若い経営者、面白いヤツだったな。行けばまた会えるかな』『また商店街を散歩したいな』といった形で、地域コミュニティとの接点に魅力を感じてもらい、嬉野温泉で過ごす時間が当たり前の日常として利用者の暮らしのなかに溶け込んでいる状況になれば、『また嬉野に出かけよう』と思っていただける大きなモチベーションになるのかなと。
そう考えると、和多屋別荘のなかで利用者をいかに繋ぎ止めておくか、というような意識はナンセンス。本音をいえば、館内で飲食していただくほうが売上も立つのでありがたいですし、そうしたニーズに対応できるレストランを館内に増やしていくといったサービスの拡充も進めていきます。が、最終的なゴールはそこではない」(小原氏)
和多屋別荘を起点にして、ワーケーションで訪れた人々が嬉野の各地に出向き、地域に馴染んでいく。嬉野で暮らす人々がワーケーションで再訪した人を「おかえり」と迎え入れる。そうした環流を生み出していくことがワーケーション事業の勘どころになってくると、小原氏は考えている。そして、本田氏は今後「ダブルアドレス」がキーワードになると見据える。
「拠点が2つある感覚というか。出張ではなく、地元に帰る、家に帰る感覚をワーケーションで感じてもらえれば、それがリピートに繋がってくるはず。“人と人とのつながり”とか“自分だけの居心地のよい環境”といった側面をどう提供していくか。それを追求していく姿勢がワーケーション事業ではマストになってくるでしょう。
一方で、それだけではまだ足らないという意識もある。いくらリピートしてもらっても、3泊、4泊、5泊と連泊していけば、どんなに環境がよくても、地域に馴染んでも、やはり飽きがくる。
そのためにも、嬉野にある資産をもっと活用して、魅力あるコンテンツをさらに生み出していくことが、我々のミッションだと思っているんです。アミューズメントパークではありませんが、やはり中毒性のあるコンテンツは訴求力も強い。嬉野ならではの魅力を大事にしつつ、どうすればより訴求力のあるコンテンツを提供できるか。それも今後の課題だと捉えています」(本田氏)