心の平穏が大切な時代だ。「なぜそんな言い方しかできないのか」──誰しも心のなかで思ったことがあるはず。だが、逆もまた然り。大人力について日々研究を重ねるコラムニストの石原壮一郎氏が指摘する。
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部下や後輩からのメールに「わかりづらい書き方をしてしまってすみません」と書いてあった場合、相手はほぼ間違いなく「ちゃんと読んでくれよ。読解力ないなあ」と思っています。ここで「そうだよ、書き方がわかりづらいんだよ」とムッとしているようでは、社会人としても大人としてもあまりに未熟と言わざるを得ません。
私たちは日々、無意識のうちに「ホンネをやわらげる言い換え」を駆使しています。無茶な値引きを要求してきた取引先に対して、ストレートに「ふざけるな!」という代わりに「いやあ、こちらもギリギリで」と返したり、後輩に頼みごとをするときに、やるのが当然と思っていても「忙しいのに悪いけど」と前置きを付けたり……。
それはけっして「ウソ」ではありません。ホンネをやわらげる言い換えは、相手に対する大人のやさしさであり、無用の軋轢を避ける生活の知恵です。しかもコロナ禍で、コミュニケーション力の大切さがあらためて浮き彫りになりました。
「これは役に立つ!」「大人としてひと皮むけました」という声があちこちから聞こえる(気がする)話題の本『【超実用】好感度UPの言い方・伝え方』(ワン・パブリッシング、私著)から、社会人として活用したい言い換えフレーズ10例をご紹介しましょう。
──リモート会議で上司に設定のミスを指摘するときに
「音声の具合が、なんかちょっとヘンですね」
【ホンネ】「また音声をミュートにしてるだろ。早く覚えてくれよ」
【類語】「お電話が遠いようです」(もっと大きな声で話してくれ)
──技術や感覚がちょっと古めの会社に仕事を依頼する
「最近は、こういうことを安心してお願いできる会社が減っちゃって」
【ホンネ】「長い付き合いだから、たまには仕事を回してあげるよ」
【解説】打ち合わせで話がひと段落したタイミングで、さりげなく呟くのがコツ。
──友人や趣味の集まりの仲間に面倒な頼みごとをするときに
「無理なら断わってくれていいんだけど」
【ホンネ】「たぶん断わらずにやってくれると思うから言うんだけど」
【解説】断わる余地を残して頼むことで、むしろ断わりづらい雰囲気になる。