前クールで放送された宮藤官九郎(50才)脚本のドラマ『俺の家の話』(TBS系)での江口の姿も記憶に新しい。コメディである同作は、俳優同士の掛け合いのテンポ感が大きなカギとなるが、その中でも江口は、各シーンの中心となる人物を引き立てつつ、時には自分も前に出て、主演の長瀬智也(42才)をはじめ、西田敏行(73才)や桐谷健太(41才)などクセモノ揃いの俳優たちとの演技合戦を繰り広げてくれた。江口の“名バイプレイヤー”ぶりが100%発揮された作品だったと思う。
しかし、今回の『ソロ活女子のススメ』では江口は主演。映し出されるのは、基本的にソロ活に興じる恵役の江口ばかりだ。見慣れていない分、視聴者にとっても主演としての江口は未知数なところがあっただろうが、カラッとした人物を多く演じてきた彼女の“おひとりさま”は、見事なハマり役となっている。江口の淡々とした語り口や振る舞いも役柄にマッチしており、恵の魅力の一つとして調和しているのだ。
本作はコメディではないものの、江口は他愛もない日常会話さえ、セリフの緩急だけで笑いに変えてしまう。また、仕事とソロ活、オン・オフをハッキリと切り替えている恵の生き方も見ていて気持ちが良い。本人によるナレーションの助けもあるが、その表情や足取りからは、ソロ活を通して恵が何を感じているのかがしっかりと伝わってくる。他者との演技の掛け合いではなく一人で物語を進めていく本作は、江口による“一人芝居”の作品とも言えるが、「ひとり」だからこそ見せられる細かな表現に彼女の実力が垣間見られ、多くの人が魅了されるのではないだろうか。
彼女の俳優としてのポテンシャルの高さが、恵というキャラクターや作品全体に反映されている本作。名バイプレイヤーとして多くの場数を踏んできた江口だからこそ実現した作品であることは間違いない。
【折田侑駿】
文筆家。1990年生まれ。映画や演劇、俳優、文学、服飾、酒場など幅広くカバーし、映画の劇場パンフレットに多数寄稿のほか、映画トーク番組「活弁シネマ倶楽部」ではMCを務めている。