マンションの共用階段やマイカー内で会議

 テレワークは様々な悲喜劇を生んだ。

 ある人はマンションの共用階段で打ち合わせや会議をこなすようなった。そこなら普段は人がほとんど通らないからだ。しかし、何度か利用するうちにご同輩が出現し始めた。そういった人たちは皆、住戸内で仕事用の場所がないのだ。

 駐車場に止めてあるマイカーの中から会議に参加する人もいる。ふと隣の車を見ると、中に同じような人がいたという。

 子どもたちが学校に行かないので、上階から伝わる振動が気になった人もいた。特に戸境壁が薄いタワマンでは、普段なら気にならない隣戸の生活音に苛立つケースも多かったようだ。

「もっと広い家に引っ越そう」
「あと一部屋多い住まいを探そう」

 テレワークの普及は、住宅市場にそういった「コロナ需要」を生み出した。

中古タワマン、郊外の安売り戸建てが人気

 コロナ以後、首都圏の住宅市場で爆発的に売れたのが新築戸建てである。それはもう「飛ぶように」という表現が大げさではないほどの売れ行きだった。

 さらに、テレワークに使える様々な共用施設が充実している湾岸エリアの中古タワマンが売れた。価格も上昇気味である。

 多くの人が手狭な賃貸住宅から部屋数と広さを求めて、住宅購入を早めたのだ。従って、こういった動きは、ある程度までは需要の先食いと見做すことができる。

1000万円以下の郊外戸建てが飛ぶように売れている(イメージ)

1000万円以下の郊外戸建てが飛ぶように売れている(イメージ)

 郊外エリアにある、1000万円未満で買える中古戸建ても売れた。湾岸の中古タワマンを購入するほどの予算がない人が、そういう物件を買ったのだと推測できる。戸建てなら部屋数も多いし、マンションの部屋ほど閉塞感がないので、そこで長い時間を過ごしても陰鬱な気分になりにくい。

 マンションでは「密」を避けるためにエレベーターが使いにくくなっていた。しかし、戸建てならすぐに外に出られるので、気晴らしの散歩も容易だ。

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