「顔は思い出せるのに、名前が思い出せない……」「玄関のカギ、ちゃんとかけたっけ?」──。誰もが時おり襲われる“もの忘れ”の不安。人類の英知をもってしても、人間の脳の全容解明には至っていない。だが、「生活習慣を変えれば脳の老化は防げます」とアドバイスするのは、認知症の予防・治療の第一人者で、アルツクリニック東京院長の新井平伊医師だ。新井医師が、今日からすぐできる「頭のメンテナンス」方法を指南する。
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酒は「量」より「頻度」が危ない
個人差がありますが、脳へのダメージが大きいのは、一度に飲む量よりも毎日飲む習慣です。脳の萎縮を着実に進めるからです。もの忘れを自覚するようになったら、節酒、可能ならば断酒が望ましいです。もの忘れが気になり受診した軽度認知障害(MCI)の人に私は「人生取るか、酒取るかで10年後が全然違います」と話します。
寝不足は脳の大敵
老廃物のアミロイドβは通常、睡眠中に代謝・分解され、脳の外へ洗い流されます。睡眠時間が短いと排泄が遅れ、寝不足でアミロイドβの蓄積が進むというデータがあります。最適な睡眠時間は個人差がありますが、疫学的なデータから、6.5~7時間が最も認知症になりにくく、6時間未満と8時間以上は2倍、認知症になりやすいとされます。
対人ゲームで前頭葉を活性化
お勧めはトランプなどの対人ゲームです。相手の手を予測し、自分の手を考えるからです。決められた答えがなく、推察し、思考して判断する作業の連続は前頭葉を大いに使います。計算ドリルなどいわゆる「脳トレ」の有効性に私は否定的です。単純に同じ作業を繰り返すだけでは脳の限られた部分しか使わず、十分な刺激にならないからです。