社会情勢を鑑みると、今後は名作が埋もれる危険性が高くなりそうだという。
「例えば、出演者である既婚者の男性が亡くなり、既に妻に先立たれていた場合、子供に連絡を取りますが、その子供も死去し、結婚していないとなると、誰に許諾を得ればいいのか宙ぶらりんになる。すると、その作品は放送や上映ができなくなる。もちろん、出演者の大事な権利である『著作隣接権』は、尊重されるべきだと思います。ただ、少子化の上に、婚姻率も下落している。誰に許諾を取ればいいか不明なケースが増えていきそうなので、何らかの対応を考えなければならない時代が早晩訪れると思います」
他にも、昔の作品の再放送が減ってきている理由はいくつかある。
「昔の作品をそのまま放送すると、今の放送禁止用語が入っていたり、差別的な表現が含まれていたりする場合も結構あります。各局とも、コンプライアンス憲章のようなものがあるので、地上波では流せないドラマも存在します。出演者が不祥事を起こして放送できないこともある。でも、ドラマはあくまでドラマですし、当時の作品をそのまま見ることも日本の歴史や当時の文化を知る上で必要でしょう。そうやって封印することは、あまり良くないとは思うんですけどね……」
過去の作品が事実上消えてしまうことは、視聴者のみならず、出演者も望んでいないかもしれない。著作権の扱い方は、今後のエンタメ界の課題の1つとなるのではないだろうか。