ライフ

協力金コールセンターで働く派遣社員 殺気立つ声を受け止める側の本音

コロナ失業などの給付金相談を受け付けるオペレーターも非正規雇用(イメージ)

コロナ失業などの給付金相談を受け付けるオペレーターも非正規雇用(イメージ)

 かつてヨーロッパ諸国は植民地で、その地を統治しやすくするために、被支配者を細かくグループ分けし対立を煽って反目させ、争わせた。本当の敵である自分たちを攻撃させないための分断統治だ。いまの日本も、似たようなことをされているのではないかと訴える役所の仕事のコールセンターで働く派遣社員に、ライターの宮添優氏が、非正規労働者たちが体験している矛盾についてレポートする。

 * * *
「支配者は、被支配者の中から厳選した人々を手下に置いて、不満を持つ他の被支配者達と対峙させるんですよ」

 筆者は最初、妙なオカルト思想の人に当たってしまったか、とすら思った。コロナ禍による飲食店などへの休業、時短営業への協力金支払いに関するコールセンタースタッフ・福永良文さん(仮名・30代)は、開口一番に、こう述べたのである。

 制度がわかりにくいなどとして国民から批判を受けた、新型コロナウイルス感染症関連の様々な助成金の仕組み。そうした制度に程度はあれ不満を持った国民からの問い合わせを一手に引き受ける最前線に、福永さんはいた。

「すでに来月の家賃が支払えないとか、そういう人からの問い合わせなんですね。だから結構みなさん必死です。気持ちはわからないでもありません。殺気立ってる人もいて、そういう人はいくら説明してもわかってくれないから、ある程度ガーッと吐き出してもらい、その後にゆっくり説明する。わかった気になってくれるまでやる」

 理不尽なことを一方的に言い放つ人もいたが、それらを鎮める術も知っている。これは窓口役人らしいある種の「テクニック」かとも思えるが、福永さんは臨時のコールスタッフであり、手練れの役人ではない。派遣会社に登録し、期間限定でコールセンタースタッフとして働くようになった派遣社員なのだ。そればかりか、協力金や給付金について問い合わせてくる人々よりも前に、すでに仕事を失っていた。

「ニュースを見ていても思うんですよ、僕の方が大変じゃんって。だから(電話口の)相手にも、結構冷静に対応できるというか。周りからは『優しく寄り添うような口調』って褒められますけどね、優しさじゃなく、失業経験のある先輩としての同情みたいなものです。わかるよ、って」

 コールセンターで働く前は、OA販売機器会社の主任だったが、ここでも待遇は派遣社員だった。それでも、派遣社員としては最上位のクラスで、給与も社員の8割程度は貰えるという恵まれた条件だった。福永さんの任務は、主に社員と派遣社員の間に入って様々な調整を行う役、といえば一般的な中間管理職を思わせるが、実態はといえば、会社の言い分を派遣という同じ立場から、他の派遣社員に理解させる役。

「クビになりたくないから会社のスパイとなって、同じ立場の派遣社員の中に潜って、不平不満ばかりの社員がいれば報告したりして。でも結局上からも下からも汚れ役を押し付けられるようになって、我慢の限界を感じていたところでコロナ。吹けば飛ぶような規模の事業所はあっけなく閉鎖となり、派遣はもれなくクビ。私の我慢も全くの無駄でした」

関連記事

トピックス

愛子さま
【愛子さま、日赤に就職】想定を大幅に上回る熱心な仕事ぶり ほぼフルタイム出勤で皇室活動と“ダブルワーク”状態
女性セブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン
岡田監督
【記事から消えた「お~ん」】阪神・岡田監督が囲み取材再開も、記者の“録音自粛”で「そらそうよ」や関西弁など各紙共通の表現が消滅
NEWSポストセブン
岡田監督
【記事から消えた「お~ん」】阪神・岡田監督が囲み取材再開も、記者の“録音自粛”で「そらそうよ」や関西弁など各紙共通の表現が消滅
NEWSポストセブン
嵐について「必ず5人で集まって話をします」と語った大野智
【独占激白】嵐・大野智、活動休止後初めて取材に応じた!「今年に入ってから何度も会ってますよ。招集をかけるのは翔くんかな」
女性セブン
行きつけだった渋谷のクラブと若山容疑者
《那須2遺体》「まっすぐ育ってね」岡田准一からエールも「ハジけた客が多い」渋谷のクラブに首筋タトゥーで出没 元子役俳優が報酬欲しさに死体損壊の転落人生
NEWSポストセブン
不倫騒動や事務所からの独立で世間の話題となった広末涼子(時事通信フォト)
《「子供たちのために…」に批判の声》広末涼子、復帰するも立ちはだかる「壁」 ”完全復活”のために今からでも遅くない「記者会見」を開く必要性
NEWSポストセブン
前号で報じた「カラオケ大会で“おひねり営業”」以外にも…(写真/共同通信社)
中条きよし参院議員「金利60%で知人に1000万円」高利貸し 「出資法違反の疑い」との指摘も
NEWSポストセブン
イメージカット
「有名人なりすまし広告」の類に\"騙されやすい度\"をチェックしてみよう
NEWSポストセブン
二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
品川区で移送される若山容疑者と子役時代のプロフィル写真(HPより)
《那須焼損2遺体》大河ドラマで岡田准一と共演の若山耀人容疑者、純粋な笑顔でお茶の間を虜にした元芸能人が犯罪組織の末端となった背景
NEWSポストセブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【ケーキのろうそくを一息で吹き消した】六代目山口組機関紙が報じた「司忍組長82歳誕生日会」の一部始終
NEWSポストセブン