歯は、失えば失うほど認知症や寝たきりになるリスクが高まることが医学的に立証されており、歯を抜くことは健康寿命を縮めることに等しい。
では、どんな歯磨きが正しいのだろうか。
「毛先の硬さが『ふつう』の歯ブラシを使って、やさしくブラッシングするのが基本。歯に対してブラシを真横にし、細かく動かすのが正しい歯磨きのやり方です。歯磨き剤に含まれる研磨剤は歯を削ってしまう原因になるので、磨き終わった後の仕上げにつける。その際、歯磨き剤は高濃度フッ素が入ったものでなければ、虫歯予防になりません。おすすめは、寝る前にフッ素入りのマウスウオッシュを使うことです」(山本さん)
また、山田さんはこうアドバイスする。
「やみくもにブラッシングするのではなく、手鏡で汚れを確かめながらじっくり磨きましょう。最近は電動歯ブラシも人気ですが、結局磨ける部分は手磨きと変わりません。
さらに、虫歯予防のためには食生活の改善も重要です。砂糖を摂りすぎている人は、どれだけ歯磨きしても虫歯になりやすく、逆に、砂糖を摂らない人は磨き残しがあっても虫歯になりにくい傾向があります」
若いうちは主に虫歯で歯を失うが、年齢を重ねると歯周病の方が問題になってくる。全国抜歯原因調査(’18年)の結果を見ると、50代以降の抜歯原因は、虫歯より歯周病の方が多数を占めるようになる。
「テレビCMなどの影響で、『歯ブラシが歯周ポケットの奥まで届く』というイメージを持っている人が多いですが、歯と歯茎の間にある歯周ポケットの溝は狭くて深く、歯ブラシで磨くことは不可能です。
歯周病菌は血中の鉄分をエサにしているため、歯茎からの出血を止めると歯周病菌が大幅に減ることがわかっています。磨こうとするのではなく、歯ブラシの毛先をあてて弱い力で歯茎をマッサージすると、歯茎の細胞分裂が2~2.5倍ほど活発になって歯茎の出血が止まる。それが歯周病の改善につながるのです」(山本さん)
逆にいえば、歯周ポケットをきれいにしようとしてゴシゴシ磨いていると、歯茎を傷つけて出血する原因となり、歯周病菌も増やしてしまうことになる。
歯周病菌は心臓疾患や脳血管疾患、心筋梗塞、糖尿病といった全身疾患の割合を増加させるほか、認知症のリスクを高めることも近年の研究で明らかになっている。
力任せの歯磨きは、虫歯以上のリスクがあることを覚えておきたい。
※女性セブン2021年7月1・8日号