テレビ大好きイラストレーターとして、ドラマの感想コラムなどを執筆する渡辺裕子氏は、千葉のファンを公言している。渡辺氏は、「あなたの思う『千葉雄大かわいい』は、どの『かわいい』ですか?」と問いかける。
「この質問の答えって、結構みんな違うんじゃないかと思うんです。あのドラマのあの役とか、バラエティでのあざといかわいさとか、雑誌のファッションページでの萌え袖のかわいさとか。そのバラけ方が、年齢も性別も超越した、唯一無二の『千葉雄大というかわいさ』の秘密なのではないでしょうか。
『かわいい千葉雄大が見たい』という我々の願望を受けとめた彼は、今この場で必要とされているのはどの種類の『かわいい』なのかを瞬時に判断して、的確にチューニングした『かわいい』を弾き返す。それを繰り返した結果、彼の『かわいい』は虹色の光のようにバリエーションに富んだものとなり、全ての人が満足できるようになっている。こんな多彩なかわいさをあやつる人、他にちょっと思いつきません。
そして、矛盾してますが、千葉雄大さんはかわいいだけじゃないからこそ、かわいい。たとえばドラマ『盤上の向日葵』(NHK)の孤独な棋士の役や、ドキュメンタリー番組でのナレーション。あれらは人生の暗い部分も知っている大人だからこその演技です。彼はキラキラと若々しい『かわいい』を見せてくれる存在ではあるけれど、その奥に大人の心もちゃんと持っているからこそ、反射する光はよりいっそう美しく強く、そして年を経るごとに『かわいい』ものになっているのだと思います」(渡辺氏)
なぜ年齢を重ねた俳優の多くが「かわいい」イメージからの脱却を図るのか。それは時に「かわいさ」は「バカっぽさ」や「イタさ」のようなネガティブな印象に繋がってしまうからだ。かつては黄色い声が寄せられた振る舞いも、一気に「いい歳して……」という見え方になりかねない。
しかし、渡辺氏も指摘する通り、千葉のかわいさは人生経験に裏打ちされている。その奥に知性やサービス精神を感じさせるからこそ、何歳になっても千葉は「かわいい!」と素直に称賛される存在となったのだろう。「いい歳して」いるからこそ、よりかわいいのだ。
●取材・文/原田イチボ(HEW)