具体的にどんな食事を摂ればいいのか。
「ご飯やパンなど糖質は限りなくゼロに近づけ、肉や卵、魚でお腹いっぱいにするイメージです。タンパク質10gを摂るのに、牛肉なら65g、豚肉なら83g、鶏肉なら55g、卵なら1.5個必要です。
『もっと楽に摂ることができないか』という方には牛乳を原料としたホエイプロテインを勧めています。1杯でタンパク質20g前後摂れるので、朝昼晩に飲むよう指導することがあります」
当然、「肉や卵ばかりでは体に悪いのでは?」「野菜はどれほど摂ればいい?」といった疑問が出てくる。
「コレステロールが血管を傷めるから卵は1日1個までというのは、1970年代の研究が根拠で、現在の厚労省の食品摂取基準では卵の摂取基準は撤廃されています。
肉も大腸がんのリスクが指摘されていますが、肉と同時にパンや米などの糖質を摂取したままの調査研究しかなく、実は糖質による肥満のほうがリスクが高いのではないかと考えられています。
糖尿病の改善という観点では、特に野菜は推奨していません。食物繊維は腸内環境をよくしますが、野菜でお腹がいっぱいになってタンパク質を摂れなくなってしまっては本末転倒です」
これまで3食しっかり食べることが糖尿病の治療で重要とされてきたこともあり、いきなり糖質をやめるのは難しい。「糖質をゼロに近づける秘訣はありますか」という相談にはこう伝えるという。
「いきなりゼロにしようとするとほぼ失敗します。まずは、タンパク質をいっぱい食べることを意識し、ご飯やパンなどはデザート感覚で最後に少量食べるという食生活に切り替え、糖質を徐々に減らしていきましょう」
【プロフィール】
水野雅登(みずの・まさと)/1977年生まれ。杏林大学医学部医学科卒業。内科医。日本糖質制限医療推進協会提携医。著書に『糖質オフ大全科』『糖尿病の真実』など。
※週刊ポスト2021年7月30日・8月6日号
◆当初、タイトルに「糖尿病専門医」と記しましたが、誤りでした。お詫びして訂正いたします。(2021年8月8日18時39分追記)