自作カセットテープでサプライズ
待ちゆく女性たちのヘアスタイルはワンレンにソバージュ。太い眉にショッキングピンクのリップが大流行した(写真/共同通信社)
いまでこそ、車に興味がない若者も多いが、バブル期においては車もまたステータスだった。「デートといえばドライブ」が定番となっていた。バブル期に数多くのデートを重ねてきたマイケル富岡が振り返る。
「車は当時、デートのマストアイテム。移動手段というだけでなく、彼女や気になる女性と一緒に過ごせる空間でした。1990年、ぼくが乗っていたのは、当時『デートカー』と呼ばれていたホンダのプレリュード。女子大生から人気だったんですよ。
デートコースの定番はやっぱり海。横浜経由で湘南方面に向かう海沿いの国道134号線ドライブは外せなかったですね。BGMももちろん大切。相手の好みを想像しながら、自分でセレクトしたオリジナル音源を作って、カセットテープに吹き込んで。DJなので、曲紹介や、さりげなくその娘の名前を入れてあげるサプライズも。いま思い出すとちょっと恥ずかしいですね(笑い)。
でも、相手が喜んでくれるかなと思うそのドキドキワクワク感が楽しかった。今のメンズに比べると相当、マメだったんじゃないかな」
イタめしが男子に自身を与えた
バブル期では、デートでの食事も変化した。1990年ごろの「イタめし」ブームの背景について、食文化研究家の畑中三応子さんはこう語る。
「1980年代にはやったフランス料理は、テーブルマナーに緊張し、財布にも厳しい感がありました。その点、イタリア料理はにぎやかで気取らない雰囲気の店が多く、ワインも定番を覚えておけばそれなりに格好がつく。“ボナセーラ”“ボーノ”といったイタリア語の明るい響きも時代にマッチしていました。フランス料理のデートで縮こまっていた男子がイタリアンで堂々と振る舞えるようになったのです」
1988年には雑誌『Hanako』が「イタめし」と銘打って人気に拍車をかけ、1990年、同誌にティラミスが掲載されるや、イタリアンでのデートが市民権を獲得した。