JR西日本「TWILIGHT EXPRESS 瑞鳳」一番列車の撮影に臨む鉄道ファンたち。多くの撮り鉄はマナーを守っている(手前)*写真と本文は関係ありません(2017年、時事通信フォト)
「『昔はよかった』とおっしゃる方もいますが、昔は昔でトラブルがありました。今も昔もひどい人が一部いる、ということなんです。ただ、現在は、鉄道写真をSNSに投稿して『いいね』を稼ぐことを目的とする人が増えた印象です。鉄道写真に限らず全てのジャンルで言えることですが、『いいね』の数を競うあまり、無茶しすぎてしまう人も出てきてしまうのでしょう。自分の中の理想のイメージに囚われた結果、臨機応変になれず、予想外の出来事への怒りが噴出してしまうのだと思います。
写真の中でも鉄道写真というのは愛好家が非常に多いジャンルで、『複数のカメラ雑誌を足した部数が、鉄道写真雑誌1冊の部数と同じ』という逸話もあるくらいです。人が多いと、どうしてもトラブルの数も増えてしまいます」
広田氏の父親・広田尚敬氏もまたプロの写真家だ。鉄道写真の大家である父親から教わったのは、「安全に」という心構えだった。
「僕が小学生時代にブルートレインのブームが来て、いい写真を撮ってやろうと実に燃えたものです(笑)。そのとき、父親からよく言われたのが『安全に』ということでした。どんなにいい写真を撮っても、安全じゃないと意味がない。安全を侵してまで撮影する意味はない。安全を守ることが、被写体である鉄道を守ること、近隣住民を守ること、ひいては鉄道撮影という文化を守ることに繋がります。この考え方は、今の僕自身、講演などで時間をかけてお伝えしていることです」(広田氏)
広田氏は、撮影スポットでのゴミ拾いなどの活動も行っているという。当たり前の事実だが、鉄道撮影というジャンルに身を置く全員が悪いわけではなく、その大半はマナーを守る善良な人々だ。数々のトラブルが話題になる中で、肩身を狭くしている撮り鉄も多いことだろう。
◆取材・文/原田イチボ(HEW)