高齢者は「慎重な投与」が必要な糖尿病薬リスト
同様に江戸川病院院長の加藤正二郎医師は、長年インスリン注射と人工透析を受けていた糖尿病患者が感染症を発症し入院した際、食事療法で断薬に踏み切った。
「60代の男性でしたが、当院に入院中は1日あたりの糖質を100グラムまでにする糖質制限食に切り替え、インスリン注射も血糖値を測りながら量を調節しました。すると血糖値は安定し、感染症も約1か月で沈静化。その後はインスリンを打たずに、5年経った現在も経過は良好です」
重い副作用が出たことをきっかけに断薬が行なわれることもある。有楽橋クリニック院長の林俊行医師が語る。
「糖尿病の60代女性は昨年、脚のむくみと息苦しさを訴えて当院を受診しました。診察で慢性心不全がわかり、長年飲んでいたチアゾリジン薬の副作用の疑いがあったため、服用を中止。同時に減塩指導を行なうと症状は改善していきました」
まず減らしやすい薬から
日本で唯一の「薬やめる科」を設立した松田医院和漢堂の松田史彦院長は、高コレステロール薬は「最初に断薬を検討していい薬だ」と語る。
「高コレステロール薬は、細胞の膜を薄くして筋肉の溶解や肝障害を起こす可能性がある。コレステロール値があまりに高すぎる人や特殊な病気である場合を除き、私の経験ではやめて症状が悪化する人はほとんどいないので、最初にやめやすい薬だと思っています」
生活習慣病の治療薬は同時に何種類も服用するケースが多いが、どこから手をつけるべきなのか。前出・谷本医師は尿酸値を減らすための痛風治療薬を選ぶことが多い。
「生活習慣が原因となる高尿酸血症(痛風)の人は、同時に高血圧や肥満などであることが多い。比較的減らしやすいのは服用時だけ尿酸値を下げる作用がある尿酸の薬です。動脈硬化が進み『降圧剤はなかなか減らせない』ケースも多いが、痛風治療は食事や生活習慣の見直しで改善が見込めます」
まずは、薬さえ飲んでいれば大丈夫という考えを改めたい。
※週刊ポスト2021年8月27日・9月3日号