芸能

若山騎一郎が振り返る 千葉真一さんに「親父って呼べ」と言われた日

千葉真一さんと若山騎一郎(左)

千葉真一さんと若山騎一郎(左)

 千葉真一さん(享年82)を「親父」と慕う俳優が、若山騎一郎だ。父・若山富三郎と千葉は親交が深く、映画『魔界転生』(1981年)では宿敵役として共演。千葉は常々、「若山先生は僕の師匠」と公言してきた。千葉には新田真剣佑、眞栄田郷敦という2人の息子がいるが、富三郎の逝去後は騎一郎を“もう一人の息子”として可愛がった。若山が明かす。

 * * *
 中学、高校時代は喧嘩に明け暮れる不良でした。こいつをどうしようかと父親が悩んで、「芸能界に入れるか」という話になった。それで父親からの口添えもあって、高校中退後にJACの13期生として入りました。

 当時、千葉真一といえば大スター。真田広之さんや志穂美悦子さんを育て、世間にもJACの名は浸透していた。俺は喧嘩が強かったし、バック転くらいはできたから、「JACでやっていることくらい簡単だろう」と考えていた。でも甘かった。周りは元自衛隊員、体操選手とか凄いのがたくさんいて、彼らが音を上げるほどトレーニングがきつい。当然、俺は落ちこぼれていきました。

 結局、椎間板ヘルニアになってJACを辞めることになるんだけど、千葉さんから電話がかかってきて「ウチを辞めてもいいから、芸能界にはいろよ」と言ってくれた。そんなふうに優しく言ってくれた人は人生で一人もいなかった。それで劇団昴に入って芝居を勉強したんです。

 父親が亡くなって三回忌だったかな。千葉さんが来て、「今日から俺のこと“親父”って呼んでいいぞ。若山先生がいないんだから、お前は俺にとって息子みたいなもんだろ」と言ってくれてね。俺が30歳になった頃で、そこから親父って呼ぶようになった。実の父親は“お父さん”か“先生”としか呼んだことがない。「親父」って呼べるのは千葉さんだけでした。

 どんな時でも温かく見守ってくれました。俺が事件を起こした時、怒鳴り飛ばされて、物凄い剣幕で怒られました。でも以降はその話題に触れることはなかった。

 仕事面でも、いまだに勉強させてもらっています。『魔界転生』のラスト、柳生十兵衛(千葉)と柳生宗矩(富三郎)の対決シーンなんて、何度見たか分からない。あの立ち回りはリハーサル1回しかやっていないからね。普通あれだけのシーンは最低でも2~3回はリハをやるけど、「真一、これ一発でいくぞ」と父親(富三郎)が言ってね。二人とも意地でもNGは出さない。半端じゃないプレッシャーがあった。そんな中で命を削るような名シーンが生まれた。

 ああいう語り継がれる名作を俺もいつか作りたいと願っていたし、それを“二人の父”に見せたかった。

※週刊ポスト2021年9月10日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

岡田監督
【記事から消えた「お~ん」】阪神・岡田監督が囲み取材再開も、記者の“録音自粛”で「そらそうよ」や関西弁など各紙共通の表現が消滅
NEWSポストセブン
成田きんさんの息子・幸男さん
【きんさん・ぎんさん】成田きんさんの息子・幸男さんは93歳 長寿の秘訣は「洒落っ気、色っ気、食いっ気です」
週刊ポスト
愛子さま
【愛子さま、日赤に就職】想定を大幅に上回る熱心な仕事ぶり ほぼフルタイム出勤で皇室活動と“ダブルワーク”状態
女性セブン
テレビや新聞など、さまざまなメディアが結婚相手・真美子さんに関する特集を行っている
《水原一平ショックを乗り越え》大谷翔平を支える妻・真美子さんのモテすぎ秘話 同級生たちは「寮内の食堂でも熱視線を浴びていた」と証言 人気沸騰にもどかしさも
NEWSポストセブン
嵐について「必ず5人で集まって話をします」と語った大野智
【独占激白】嵐・大野智、活動休止後初めて取材に応じた!「今年に入ってから何度も会ってますよ。招集をかけるのは翔くんかな」
女性セブン
行きつけだった渋谷のクラブと若山容疑者
《那須2遺体》「まっすぐ育ってね」岡田准一からエールも「ハジけた客が多い」渋谷のクラブに首筋タトゥーで出没 元子役俳優が報酬欲しさに死体損壊の転落人生
NEWSポストセブン
不倫騒動や事務所からの独立で世間の話題となった広末涼子(時事通信フォト)
《「子供たちのために…」に批判の声》広末涼子、復帰するも立ちはだかる「壁」 ”完全復活”のために今からでも遅くない「記者会見」を開く必要性
NEWSポストセブン
前号で報じた「カラオケ大会で“おひねり営業”」以外にも…(写真/共同通信社)
中条きよし参院議員「金利60%で知人に1000万円」高利貸し 「出資法違反の疑い」との指摘も
NEWSポストセブン
二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【ケーキのろうそくを一息で吹き消した】六代目山口組機関紙が報じた「司忍組長82歳誕生日会」の一部始終
NEWSポストセブン
品川区で移送される若山容疑者と子役時代のプロフィル写真(HPより)
《那須焼損2遺体》大河ドラマで岡田准一と共演の若山耀人容疑者、純粋な笑顔でお茶の間を虜にした元芸能人が犯罪組織の末端となった背景
NEWSポストセブン