スポーツ

ドラフト注目候補の市立和歌山バッテリー告白「地方大会敗退を糧に」

注目右腕の小園

ドラフトでも注目の右腕・小園健太

 今年は10月11日に開催されるプロ野球ドラフト会議。例年、社会人、大学野球の有力選手以上に、注目を集めるのが“甲子園のスター”だが、今回は地方大会で涙を呑んだ高校に有力選手が存在する。その筆頭格とも言えるバッテリーが、和歌山にいる。ノンフィクションライター・柳川悠二氏がレポートする。

 * * *
 智弁学園(奈良)との兄弟校対決を制し、日本一となった智弁和歌山ナインの表彰式の様子を眺めながら、思い起こしたのはふたりの逸材だ。同校にとって同じ和歌山のライバルであり、この春の選抜に出場していた市立和歌山の152キロ右腕・小園健太と、捕手の松川虎生。彼らこそ、智弁和歌山をもっとも苦しめた学校であり、バッテリーではなかったか。

 この夏、市立和歌山は和歌山大会決勝で智弁和歌山と対戦した。小園は6回途中まで強力打線を相手に無失点の好投を続けていたが、終盤に変化球の失投を見逃してはもらえず1対4で惜敗した。

 中学時代からバッテリーを組み、共に多くの強豪校からの勧誘を断り、和歌山県内の公立校に進学したふたりは、今秋のドラフトでも上位候補に挙げられる。高校野球が終わって、一ヶ月以上が経過したなか、小園はこう語った。

「甲子園はずっと見ていました。同じ県にこんな強いチームがいたんだと改めて思いましたね。智弁和歌山がいたから自分の力も上がりました」

 智弁和歌山には右の大砲となる徳丸天晴のほか、強打の野手が揃うが、小園は意外なことに智弁和歌山のエース・中西聖輝に、昨秋に変化球をとらえられて一発を浴びた。選抜へつながるこの試合には勝利したものの、小園にとって高校野球生活の公式戦で唯一浴びた本塁打となった。

「和歌山といえば、智弁和歌山。そういう世間の認識の中で『イチコウ』(市立和歌山)に飛び込んで、歴史を変えたかったし、自分たちで新しい歴史を作りたかった。最後の夏は負けてしまったけど、去年の秋は智弁和歌山に勝って甲子園に出られた。一度も甲子園に出られなかったわけじゃない。やっぱり、高校野球生活に悔いはないです」

 小園は選抜に出場した春から比べても、胸板が一回り分厚くなっていた。

「接骨院に通っているんですけど、そこの先生に肩周りの筋肉が足りないとアドバイスされて。意図的に上半身のトレーニングに力を入れました。筋肉を付けすぎても可動域が狭まってしまう。ベンチプレスでも重い重量ではなく、軽い重さで回数をこなして柔軟性を失わないように気を遣っています。春と比べれば、小さな力感で8~9割のボールが投げられるようになったと思います」

 球速だけでいえば、夏の甲子園に出場した秋田・ノースアジア大明桜の風間球打がMAX157キロで小園を上回る。しかし、聖地で変化球の制球に関して不安を露呈した風間に対し、小園には打者の手元で鋭く変化するツーシームやスライダーなど、多彩な変化球も手の内にあり、相手打者を手玉に取る投球術にも長けている。

「今の自分に足りないのは、圧倒的な真っ直ぐ。真っ直ぐで押しきることができず、かわすピッチングになってしまうところがある。真っ直ぐのキレを求めたいのと同時に、カットボール、ツーシームのスピードを真っ直ぐに近づけたいし、緩急をつけるためにカーブ、チェンジアップの精度も上げたい」

 市立和歌山の主将でもある捕手・松川の「虎生(こう)」の名は、阪神タイガースファンの祖父によって名付けられた。小園と同じ8月30日にプロ志望届を提出した松川だが、意中の球団はなく、12球団OKの構えだ。

「指名されることを信じて、待つだけです。おじいちゃんは『阪神に行け』と言うんですけど、行こうと思って行ける場所じゃないじゃないですか。(スカウトの評価は?)気になりますね。選ぶ選ぶと(新聞紙上などで)言いながら選ばないじゃないですか(笑)。とにかく、打てる捕手が目標。できれば1年目から一軍で活躍できる一流の選手になりたい。子供の頃からずっと家ではプロ野球中継を観ていました。憧れの舞台です」

関連記事

トピックス

前号で報じた「カラオケ大会で“おひねり営業”」以外にも…(写真/共同通信社)
中条きよし参院議員「金利60%で知人に1000万円」高利貸し 「出資法違反の疑い」との指摘も
NEWSポストセブン
昨年ドラフト1位で広島に入団した常広羽也斗(時事通信)
《痛恨の青学卒業失敗》広島ドラ1・常広羽也斗「あと1単位で留年」今後シーズンは“野球専念”も単位修得は「秋以降に」
NEWSポストセブン
中日に移籍後、金髪にした中田翔(時事通信フォト)
中田翔、中日移籍で取り戻しつつある輝き 「常に紳士たれ」の巨人とは“水と油”だったか、立浪監督胴上げの条件は?
NEWSポストセブン
二宮が大河初出演の可能性。「嵐だけはやめない」とも
【全文公開】二宮和也、『光る君へ』で「大河ドラマ初出演」の内幕 NHKに告げた「嵐だけは辞めない」
女性セブン
新たなスタートを切る大谷翔平(時事通信)
大谷翔平、好調キープで「水原事件」はすでに過去のものに? トラブルまでも“大谷のすごさ”を際立たせるための材料となりつつある現実
NEWSポストセブン
品川区で移送される若山容疑者と子役時代のプロフィル写真(HPより)
《那須焼損2遺体》大河ドラマで岡田准一と共演の若山耀人容疑者、純粋な笑顔でお茶の間を虜にした元芸能人が犯罪組織の末端となった背景
NEWSポストセブン
JR新神戸駅に着いた指定暴力団山口組の篠田建市組長(兵庫県神戸市)
【ケーキのろうそくを一息で吹き消した】六代目山口組機関紙が報じた「司忍組長82歳誕生日会」の一部始終
NEWSポストセブン
元工藤會幹部の伊藤明雄・受刑者の手記
【元工藤會幹部の獄中手記】「センター試験で9割」「東京外語大入学」の秀才はなぜ凶悪組織の“広報”になったのか
週刊ポスト
映画『アンダンテ~稲の旋律~』の完成披露試写会に出席した秋本(写真は2009年。Aflo)
秋本奈緒美、15才年下夫と別居も「すごく仲よくやっています」 夫は「もうわざわざ一緒に住むことはないかも」
女性セブン
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
森高千里、“55才バースデー”に江口洋介と仲良しショット 「妻の肩をマッサージする姿」も 夫婦円満の秘訣は「お互いの趣味にはあれこれ言わない」
女性セブン
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
【初回放送から38年】『あぶない刑事』が劇場版で復活 主要スタッフ次々他界で“幕引き”寸前、再出発を実現させた若手スタッフの熱意
女性セブン
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
【悠仁さまの大学進学】有力候補の筑波大学に“黄信号”、地元警察が警備に不安 ご本人、秋篠宮ご夫妻、県警との間で「三つ巴の戦い」
女性セブン