映画評論家の前田有一氏もこう言う。
「種田さんは今でこそ世界的なデザイナーですが、『スワロウテイル』の頃は、そこまで知名度はなかった。しかし同作から現在に至るまでの関わった仕事には『世界がイメージする日本らしさ、でも実際の日本とは少し違う世界』という通底する世界観があり、どこか現実を超越したイメージや空間を作り出すのがとても上手い舞台美術デザイナーという印象があります。
例えばタランティーノ監督の『キル・ビル』での仕事にしても、リアルな時代劇でなく、エキゾチックで絵的に映える舞台芸術的な側面がいかんなく発揮されています。日本的でありながらも、コスモポリタンでインターナショナルな世界観を持った方というイメージがあるので、今回の仕事はうってつけだったのかもしれません。
演出を担当した小橋さんも年齢の割にはキャリア長く、最近は世界を放浪し様々な経験をしてきた。『スワロウテイル』以降、2人がどのような関わりがあったのかは分かりませんが、小橋さんが種田さんの作品をチェックしていたのは間違いないはず。演出を担当した当初から、きっと種田さんのことが頭にあったのでしょう。開閉式も日本的なイメージを散りばめながらも、普遍的な世界観、イメージを作り上げたことが成功に繋がったと思います」
すべてが付け焼き刃だったオリンピックの閉会式とは対照的に、長年培ってきた一貫した世界観が、あの閉会式に結実したのだろう。