12年ほど前、家族でのハワイ旅行。今年成人した娘と亡夫の一枚
3年後、クローゼットをようやく開けられた
気持ちの変化が起きたのは、約3年後。仕事にも復帰して気持ちが少し落ち着き、夫のクローゼットの扉を開けることができたのだ。それから少しずつ、本当に少しずつ手放せるようになっていった。
「白のコットンパンツは20本近くありましたが、シミが浮いてきたものから順に処分していき、いまは数本になりました。ハワイが好きで、たくさん持っていたアロハシャツもずいぶん減らすことができました」
結婚前に買ったであろうものは処分できるが、見覚えのあるものは手放す踏ん切りがつきにくい。そういう場合は無理をせず、処分できる気持ちになるまで待てばいい。だから、一度にスッキリとはいかないが、緩やかに整理をしていくのが自分には合っていると思っているという。
ネクタイは、自分が使えるグッズにリメーク
愛用していたネクタイは、お得意の手芸でリメーク。ネクタイの小剣先(結んだときに後ろ側になる方)のブランドロゴを残し、小さなネクタイの形にしてユニクロのバッグにアップリケ。イタリア語で“思い出”という意味の「メモリア」という文字も入れて仕上げた。さらに、水玉のネクタイはヘアバンドにして、おそろいのシュシュも制作。
「大事なネクタイを切り刻まれて、天国の主人は怒ってるかもしれないけど、ただ捨ててしまうのではなく、遺品から新たな作品を作るのも供養の1つ。私にとっての“感謝離”です」
最近、クローゼットの奥に箱が隠されているのを発見。中には、まだつきあう前にプレゼントしたバレンタインのチョコレートが入っていた。
「大切にしまってあると聞いたことがありましたが、本当にあったとは。主人の気持ちが伝わってきて、本当にうれしく思いました。これも大切な思い出なので、そのまましまっておきます」
【プロフィール】
寺田理恵子さん/1961年7月15日生まれ。フジテレビアナウンサー時代は『オレたちひょうきん族』などのバラエティー番組に出演。2000年の再婚を機に専業主婦になるも、夫との死別から2年後に仕事復帰。著書に『「毎日音読」で人生を変える』(さくら舎)がある。「心とからだ磨きの朗読」主宰。
取材・文/山下和恵 撮影/浅野剛
※女性セブン2021年10月21日号
9月に完成したばかりのバッグ
ヘアバンドは芯地とゴムを入れて、しっかり縫い上げている
ヘアバンドをした寺田さん