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仕事終わりにここで一杯  “帰り道”という名の神戸の角打ち

 神戸市営地下鉄海岸線ハーバーランド駅から徒歩5分、静かな住宅街に建つ『石井商店』。近隣の工場や会社で働く人たちに長年愛されてきた。

「毎日仕事で汗かいて、ここで飲む酒は最高です! 仕事帰りにここに立ち寄るのが僕らの日常茶飯事」(30代、造船業)

「“茶飯事”はいらんやろ(笑い)。仕事とこの店がセットになってますよね。最近の若い人は誘いにくいから、彼は酒つきあってくれる最後の世代かもしれんなぁ」(40代、造船業)

カウンターでのびのびと飲んでいる若手もいれば、店の奥で小さな角打ち台を囲み、のんびりと酒を傾ける年配客の姿も。

「最初は上司に連れて来られてな、20代から通ってる。ここは私にとって“帰り道”という名の店。寄らないと家に帰れへん」(60代)。

「“仕事帰りに一杯”が日常茶飯事!」と笑い合う同僚の常連客

「“仕事帰りに一杯”が日常茶飯事!」と笑い合う同僚の常連客

「職場の大先輩たちが奥で飲んでいるときは、僕ら下っ端は軒先で飲むことも多い(笑い)。雨の日も風の日も、毎日通っとる僕らのために、店の人がいつしか雨除けのカーテンつけてくれて。ここは僕らのVIP ルームです」(30代、造船業)

 和やかな空気が流れる店内で、くつろぎ笑い合う客らが「優しくて温厚。真面目な人」と慕うのが3代目店主の石井康裕さん(57代)だ。2年前に他界した2代目の父から受け継いだ店を、妻の理加さん(54歳)と母トミ子さん(80歳)とともに繁盛させてきた。

「親父さんの代から通ってるけど、時代が変わってもこの店はずっと変わらないっていうかね。親戚の家に来たみたいな感覚なんだよね」(50代)とは、店主と小学生時代からの友人だという常連客。

「父は2年前に亡くなりましましたが、近所では“石井のおっちゃん”と呼ばれていて、強面だけど優しくて、商売っ気はない人でした。戦前から商売していて、最初は米屋やったんですよ。父と母が結婚したのが昭和37年、じいさんの代からずっと角打ちはやってるけど、私は会社務めをしていて、平成元年から店に入りました」(店主)

「ほんま優しい息子なんですよ。夫婦で店やってくれて、お客さんとおしゃべりするのが楽しいですよね。

 昔は海で働く威勢のいいお客さんも来ていたから、朝から飲んでまあ盛り上がっていてね、22歳でお嫁に来たときは、びっくりして2階まで飛び上がりそうになったわ。慣れるもんやけどな」と、母トミ子さんは軽快に語る。

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