「お客さんがみんな笑顔なんですよ。暑い夏も寒い冬も、旨そうに酒を飲んでくれて、みんな楽しそうな顔してるでしょ。帰り際にニコッとしてくれるのが嬉しいんですよね」と、店主は穏やかな笑みを浮かべる。
「マスクを外すと実はイケメンの優しい店主がいるから、女性ひとりでも来やすいんですよ」(40代)と、女性客が注文したつまみは、ニラ玉子焼きとアジフライ。
「卵がふんわりして旨い。見てみぃ、アジフライも大きいやろ。この店では熱々のもん食べられるのも好きなんですよ」(同前)と、サクサクといい音を立てて、揚げたて肉厚のフライを頬張っている。
「歩いて3、4分のところに会社があるから、今日はやめとこと思っても足が勝手に動いてしまう。僕らの会社の営業日に合わせて店を開けてくれているんじゃないかと思う」(30代)
「大将の人柄がいいからひとりでも来るし、会社の仲間ともよく来ます。先にこの店で出会って社内で『あ、同じ会社やった』って再会した人もいてる。仕事してここへ来て、オンとオフの切り替えをする場所でもあるんですよね」(30代、技術職)
この店を愛する客は皆、帰り道にほっとして、家路につく。
「アットホームでええねん。毎晩来て、ほどほどで帰るんや」(60代)と、日替わりのとろろそばをつまみに、ちびりと飲む常連客が、お財布からそっと取り出したのは、この店のスタンプカード。
「10個貯めたら、一杯サービスや」(60代)と、嬉しそうに笑う。
幸せ顔が溢れるこの店ではキンと冷えた『焼酎ハイボール』が人気。
「労働の後はこういうスカッとする酒が旨い。この一杯で、さっぱり、すっきりして、家に帰るのが僕らの日常なんです」
2021年7月12日取材