人生の変化やターニングポイントを作品に込めた
本作には、プロデューサーの伊藤主税以外にも、三吉の主演映画『Daughters』のスタッフが多く関わっているという。
「本当に信頼している方々に多く集まっていただけて、初監督作品として最高の座組みでした。映像の色味や世界観、照明一つとっても、細かい部分で同じ方向を共有できる方達と作り上げることができたので。特にカメラマンさんには『こういうパターンもあるよ』と丁寧に教えていただいたりして助けていただきました。
撮影期間は非常に面白かったですね。後半の見どころとして、バレエダンサーの飯島望未さんのダンスシーンがあるのですが、脚本の段階から作品のカギになる良いシーンにしたいなと思っていたので、全ての力を出し切って、一番時間をかけて撮影しました。ダンサーとヒロインの空気感や表情、動きから、観て何かを感じ取ってもらえるシーンになったんじゃないかなと思います。また、全体を通して映像の色味にはこだわりました。主人公の心情に合わせて段々と変化させているんです。そこも注目してほしいですね」
三吉は、「『inside you』が観た人にとって水のような作品になれば」と語る。
「私は表に立つ仕事をしているので、自分の人生の大きな変化やターニングポイントが他の方々から見えやすく、劇的なものとして捉えられやすいと思うんです。でも、それって本来みんなが色んな形で経験していることですよね。他人から見たらすごく小さな変化かもしれないけど、自分にとっては人生の選択に直結していたりもする。この作品では、そういう日常の大切さを改めて伝えたかったんです。
ちょっと変かもしれないんですが、例えるなら『水』みたいな作品です(笑い)。最近私、健康のためになるべく水をたくさん飲むようにしているんですね。それで気付いたのですが、水って同じ種類のものを買って飲んでも、その日の体調や自分のコンディションによって、甘く感じる日もあれば苦く感じる日もあるんですよね。日によって変化する自分の体調を、自分で認識していなくても、水を通して体は自然に感じているんだなと日々実感しているんです。
この作品も、物語自体にダイナミックな起伏があるわけではありませんが、観た人が自分自身を重ねて、その時の状況や年齢、経験に応じて感じてもらえるものがあると思います。折に触れて、繰り返し観てもらえる作品になれば嬉しいですね」
【プロフィール】三吉彩花(みよし・あやか)/1996年生まれ。埼玉県出身。雑誌「Seventeen」のトップモデルとして人気を誇り、“女子高生のカリスマ”とも呼ばれた。同誌卒業後は、雑誌「25ans Wedding」や「エル・ジャポン」でモデルを務める。
2012年には映画『グッモーエビアン!』で女優デビュー。以降、テレビ、CMにも数多く出演。
取材・文/阿部洋子 撮影/木川将史