国際情報

日本の奨学金を得た「中国人研究者」が帰国後に「軍事研究」していた

深刻な技術流出の可能性が…(写真=中国通信/時事)

深刻な技術流出の可能性が…(写真=中国通信/時事)

 日本経済新聞10月27日付朝刊1面トップに「安保技術、留学生は許可制 大学からの流出懸念」という記事が掲載された。〈中国を念頭に留学生を通じて重要技術が国外に流出するのを防ぎ、経済安全保障を強化する〉ため、政府は来年度から審査の徹底を大学に求めるという。

 岸田文雄新政権で「経済安全保障担当大臣」も新設された。政府が動き出した背景には、深刻な技術流出の実態がある。その詳細が書かれた政府の“極秘レポート”を、政府関係者から入手した。ジャーナリスト・赤石晋一郎氏がレポートする。

 * * *
 そこに記されていたのは驚くべき事実の数々だった。レポートのメインテーマは、中国人研究者の来歴と現在についてである。彼らがどのような背景を持って来日し、現在どうしているのかを検証したものとなっている。

「国防7校」から来た研究者

 例えば2009年に日本の文科省の奨学金を受けて、九州大学で研究に従事したA氏(レポートでは実名)という中国人研究者がいる。彼は船舶海洋工学、計算流体力学、浮体式風力発電技術等についての研究を行なっていた。

 レポート内で問題とされているのはA氏の中国での経歴だった。

 A氏は来日するまでハルビン工程大学に籍を置き、帰国後も同大学で副教授などのポストに就いているのだ。公安調査庁関係者が解説する。

「ハルビン工程大学は、『国防7校(国防7大学)』と呼ばれている7つの大学のうちの一つとして知られています。国防7校は中国人民解放軍と深い関係があり、軍事関連技術研究を行なう機関であるとされています」

 オーストラリア戦略政策研究所は、国防7大学と関係を持つことについて「非常にリスクが高い」と評価するなど、安全保障的にも要注意となっている機関だ。

 また、国防7校は中国の人材招致プロジェクトである「千人計画」との関わりも深い。千人計画は、もともと国外で優秀な成果をあげた中国人研究者を呼び戻すことなどを目的に2008年にスタート。さらに米国や欧州などの研究者も大量に招致したことで、米議会から「(他国の)技術を奪う仕組み」だと批判が上がり、昨年には日本人研究者の関与も明らかになった。国防7校は、こうした海外研究者の受け入れ先の一つとしても知られている。

 レポートには、A氏が中国内で〈国防技術の発展に寄与した研究者に授与される「国防科技工業科学進歩一等賞」を受賞しており、詳細は不明であるが、少なくとも軍事技術に転用可能な研究に従事しているとみられる〉とあり、まさに軍事研究者といえると指摘しているのだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

2013年に結婚した北島康介と音楽ユニット「girl next door」の千紗
《不倫報道で沈黙続ける北島康介》元ボーカル妻が過ごす「いつも通りの日常」SNSで垣間見えた“現在の夫婦関係”
NEWSポストセブン
秋篠宮家の長男・悠仁さまの成年式が行われた(2025年9月6日、写真/宮内庁提供)
《凜々しきお姿》成年式に臨まれた悠仁さま 筑波大では「やどかり祭」でご友人とベビーカステラを販売、自転車で構内を移動する充実したキャンパスライフ
NEWSポストセブン
中途採用応募者が急に増えて担当者は困惑(写真提供/イメージマート)
《SNSの偽情報で実害》中途採用に「条件満たさない」応募者が激増した企業、勝手にFラン認定された大学は「少子化の中、学生に来てもらう努力を踏み躙られた」
NEWSポストセブン
趣里(左)の結婚発表に沈黙を貫く水谷豊(右=Getty Images)
趣里の結婚発表に沈黙を貫く水谷豊、父と娘の“絶妙な距離感” 周囲が気を揉む水谷監督映画での「初共演」への影響
週刊ポスト
日本復帰2戦目で初勝利を挙げたDeNAの藤浪晋太郎(時事通信フォト)
横浜DeNA・藤浪晋太郎を大事な局面で起用する三浦大輔監督のしたたかな戦略 相手ファンからブーイングを受ける“ヒール”がCSの行方を左右する
週刊ポスト
宮路拓馬・外務副大臣に“高額支出”の謎(時事通信フォト)
【スクープ】“石破首相の側近”宮路拓馬・外務副大臣が3年間で「地球24週分のガソリン代」を政治資金から支出 事務所は「政治活動にかかる経費」と主張
週刊ポスト
15人の大家族「うるしやま家」(公式HPより)
《ビッグダディと何が違う?》フジが深夜23時に“大家族モノ”を異例の6週連続放送 今、15人大家族「うるしやま家」が人気の背景 
NEWSポストセブン
自身のYouTubeで新居のルームツアー動画を公開した板野友美(YouTubeより)
《超高級バッグ90個ズラリ!》板野友美「家賃110万円マンション」「エルメス、シャネル」超絶な財力の源泉となった“経営するブランドのパワー” 専門家は「20~30代の支持」と指摘
NEWSポストセブン
高校ゴルフ界の名門・沖学園(福岡県博多区)の男子寮で起きた寮長による寮生らへの暴力行為が明らかになった(左上・HPより)
《お前ら今日中に殺すからな》ゴルフの名門・沖学園「解雇寮長の暴力事案」被害生徒の保護者らが告発、写真に残された“蹴り、殴打、首絞め”の傷跡と「仕置き部屋」の存在
NEWSポストセブン
濱田よしえ被告の凶行が明らかに(右は本人が2008年ごろ開設したHPより、現在削除済み、画像は一部編集部で加工しております)
「未成年の愛人を正常に戻すため、神のシステムを破壊する」占い師・濱田淑恵被告(63)が信者3人とともに入水自殺を決行した経緯【共謀した女性信者の公判で判明】
NEWSポストセブン
指定暴力団山口組総本部(時事通信フォト)
《外道の行い》六代目山口組が「特殊詐欺や闇バイト関与禁止」の厳守事項を通知した裏事情 ルールよりシノギを優先する現実“若いヤクザは仁義より金、任侠道は通じない”
NEWSポストセブン
志村けんさんが語っていた旅館への想い
《5年間空き家だった志村けんさんの豪邸が更地に》大手不動産会社に売却された土地の今後…実兄は「遺品は愛用していた帽子を持って帰っただけ」
NEWSポストセブン