中学校に隣接する体育館で、保護者向けの説明会が開かれた(写真/共同通信社)
小学校の卒業写真で、ともに笑顔を見せる2人の少年。わずか3年後、この2人が被害者と加害者になるとは、誰が想像できただろうか。愛知県で発生した同級生刺殺事件。「いじめ」では片づけられない、根深い遺恨が存在していて──。
名古屋駅から車で30分ほどの距離にある愛知県弥富市。田園風景が広がる風光明媚なその地域の中で、ひときわ大きな日本家屋がある。駐車場には国産の高級ワンボックスカーや欧州車がズラリと並ぶ。
その豪邸の門にはパイロンとポールで作られた仕切りが置かれ、デカデカと《ここは私有地です。立ち入らないでください》という張り紙がしてあった。近隣住民が語る。
「地元の名士といわれた人の家なんですが、お孫さんがあんな事件を起こしてから周囲をシャットアウトしたんです。Aくんは体は大きかったけど物静かな子で友達を殺すなんて信じられん……一体、彼に何があったのか」
11月24日、弥富市の市立十四山中学校に通う中学3年生の伊藤柚輝くん(14才)が、校内で刺殺される事件が発生した。現行犯で逮捕されたのは、同じ中学校の同級生、少年A(14才)だった。
事件が発生したのは、伊藤くんとAが登校した直後の午前8時10分頃。
「Aは伊藤くんを廊下に呼び出し、自宅から持ってきた包丁で腹部を刺しました。その包丁は全長約35cm、刃渡り20cmほどの刺身包丁。先が鋭く細身なため、出刃包丁などに比べて殺傷能力が高いとされています。凶器は伊藤くんの肝臓を貫通して背中にまで達していました。Aはこの刺身包丁を、事前にインターネットで購入しており、犯行は計画的。Aには伊藤くんに対する強烈な殺意があったとみられています」(捜査関係者)
腹部を刺された伊藤くんは、よろめきながら教室にたどり着き、同級生たちに助けを請うた。だが、約2時間半後、搬送先の病院で出血性ショックで息を引き取った。
Aと伊藤くんは、小学校も同じで共にサッカークラブに所属し、一緒に図書委員を務めていた。幼なじみでもあった2人だが、同級生によれば「友人の1人だが、親友というわけではなかった」という。
中学に進学後、表立って関係に変化はなかったようだが、Aは“怒り”を沸々とたぎらせていたとみられている。
「事件のあった3年時は別のクラスでしたが、去年は同じクラスだった。そのとき、Aは給食当番だった伊藤くんから箸をなかなか渡してもらえなかったり、生徒会役員選挙に立候補した伊藤くんから応援演説を依頼されて“断れなかった”など、不満を募らせていた、と供述しています」(前出・捜査関係者)
Aは逮捕後の取り調べに、「やりたくないことをなんでもやらされて、うっとうしいと思っていた」「友人と話しているときに、(伊藤くんが)割って入ってくるのが嫌だった」など、伊藤くんからいじめを受けていたという趣旨の供述をしているという。