「上司が残業していると先に帰りづらい」「有給休暇や育児休暇が取りにくい雰囲気がある」といった話も耳にする。あるいは、終業間際でも上司から仕事を振られたらすぐに対応する、といった人も多いだろう。しかし、それらは他の国から見たら、大いに違和感を覚える働き方だといわれる。
実際、キューリング氏によれば、ドイツ人のほとんどは残業することがないのだという。
「ドイツの人々は、早く仕事を終えて自分の趣味や家族との時間を楽しみたいので、基本的に残業をしないように仕事をしています。企業の多くは、フレックスタイムを採用していて、社員はそれぞれの都合に合わせて仕事を始め、終業時間になるとピタッと仕事を終えるようにしています。逆に、残業を毎日ダラダラしている社員がいたら、その社員の評価は確実に下がります。残業=決められた就業時間内に仕事をこなすことができない、能力の低い社員とみなされてしまうのです」
日本では、遅くまで残業したり休日出勤したりして、少しでも会社のために貢献しようとする社員をねぎらい、評価する向きも少なくない。しかし、ドイツではまったく逆の評価を受けることになる。また、「忙しそうにしている」のも、マイナスの印象を与えるという。
「仕事でよく銀行の担当者と話をすることがあるのですが、以前担当してくれていた女性はとても優秀で、毎年昇進し、次に会う時には必ず役職が上になっていました。多忙にもかかわらず、いつも丁寧に応対をしてくれる彼女に、ある日私は、彼女をねぎらうつもりで、『いつも忙しくて大変ですね』と言ったところ、その後、彼女は私の担当から外れてしまいました。なぜかというと、私の気遣いの言葉が、彼女には嫌味に聞こえてしまったからです。
日本人には理解しがたいかもしれませんが、ドイツ人は『忙しくしている=仕事ができない、仕事が遅い』と、ストレートに言葉の意味を受け取ります。そのため、私の気遣いの発言は、彼女にとっては嫌味にしか聞こえなかったのです」(キューリング氏)
基本は「他の仕事を割り込ませない」
そうは言っても、仕事が溜まってしまえば、残業せざるをえないのではないか──そんな疑問に対して、キューリング氏はこう答える。